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新作映画2024

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2024年の新作ベスト選考に関わる作品をまとめています。新作の定義は、今年も2022/2023/2024年製作の作品で自分が未見の作品です。
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#アカデミー国際長編映画賞2024

マッテオ・ガローネ『僕はキャプテン』少年たちの過酷な移民旅

2023年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。2024年アカデミー国際長編映画賞イタリア代表。マッテオ・ガローネ長編11作目。セネガルからサハラ砂漠と地中海を超えてイタリアを目指す二人の少年セイドゥとムサの物語。漠然とした目的を抱えたままイタリア行きを決意した二人は、家族に伝えることなく過酷な旅に出る…くらいまでは良かったんだが、砂漠を超えるシーンの砂漠の美しい撮り方なんかはジャンフランコ・ロージ『国境の夜想曲』に似ていて、まさにヴェネツィア映画祭を意識したのかなぁと感じて

Marija Kavtaradzė『Slow』リトアニア、親密さと身体について

傑作。2024年アカデミー国際長編映画賞リトアニア代表。マリア・カフタラーゼ(Marija Kavtaradzė)長編二作目。コンテンポラリーダンサーのエレナは聾の若者に向けたダンス教室を開いており、そこで手話通訳のドヴィダスと出会った。エレナはこの物静かな青年をすぐに気に入るが、彼からアセクシャルであることを告白される。物語は二人の関係性を手探りで進めていき、決してニヒリズムや不必要な残酷さを経由することなく、互いに最善を尽くしても同調しきることのできないリズムを描いている

ジョナサン・グレイザー『関心領域』アウシュヴィッツの隣で暮らす一家の日常

2023年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。2024年アカデミー国際長編映画賞イギリス代表。ジョナサン・グレイザー長編四作目。1943年、アウシュヴィッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘスは妻ヘドヴィグと5人の子供たちと共に、収容所に隣接するモダンな邸宅に暮らしていた。物語の骨格だけ抜き出してくると、豪華な社宅に住む仕事熱心な夫、一世一代の大仕事、転勤を言い渡されて動揺する妻、自然環境の中で伸び伸びと暮らす子供たち、というありがちな中産階級の物語だが、それら全てがホロコーストと結び