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スタートアップに適したアイディアの見つけ方

2019年の個人的なテーマはアウトプット。ということで、最近自社の事業参入の角度を考える上で調べたりしていることをまとめました。 ユーザーに問う前の段階での思考態度について書いています。

田所さんのStartup Scienceや、馬田さんの逆説のスタートアップ思考YamottyさんのMediumなど中心に読み返しながら書いているので、スタートアップ界隈の人にとって特に目新しい情報は少ないと思いますが、自分なりに再編集してみました。

このnoteの目的は、
「守」- アイディアをビジネスにする「型」を定着させる ←ここ
「破」- 型を少しずつ改良し、自分なりの事業づくりの方法論を言語化する
「離」- 新たなビジネスを生み出す能力を再現性を持って獲得する

目次

・スタートアップにとって良いアイディアとは
・アイディアをみつける 
・アイディアをセルフチェックする

スタートアップにとって良いアイディアとは

非常に優れたスタートアップのアイデアには、3つの共通点があります。
1.創設者が望んでいるもの
2.自分で構築できるもの
3.他にやる価値があると思う人はほとんどいないもの
です。
How to get startup ideas(原文)- ポール・グレアム

前提として、自分自身もしくは自分にとって親しい人が課題を感じているものであることが望ましいとされている。なぜかといえば、確かに「問題」が存在することが証明されているから。

逆に、スタートアップのアイディアを考えようとして出てきたソリューションありきのものは、Y combinatorでは"made-up" やら "sitcom"と呼ばれて誰も欲しがらないプロダクトを作ってしまうアンチパターンとされている。

人が欲しがるものを作れ
- Paul Graham 

自分や身近な人が課題に感じている前提で「他にやる価値があると思う人はほとんどいないもの」、言い換えると創業者と他の人の間に大きな情報の非対称性があるがゆえに、他人にとってそのアイディアがバカバカしく見えるものである必要がある。

成功する人は他の人が知らない秘密を知っている
- Peter Theil
アイディアを出していく上で 最も難しいこと、 それは優れたアイディアを 考えついた時には、 最もくだらないアイディア に思えることだ
- Sam Altman

なぜ他の人にとってバカバカしく見える必要があるかといえば、多くの人にとって素晴らしく思えるアイディアは
すでに誰かが検証した結果、実は本当に欲しがる人は少なかったりビジネスにならないことがすでに証明されている
もしくは、
まだ誰もやっていなくても、すぐに大企業が参入して激しい競争に晒される可能性がある
からに分けられる。

後述するが、少ないリソースで急成長することを前提としたスタートアップでは、他社との競争をしないことが定石とされている。そのため誰もが思いつくことだったり、うまく行きそうなアイディアは避けるべきだということだ。

アイディアをみつける

スタートアップのアイデアを得るには、アイデアを「考えてはいけない」。必要なのは問題を探し出すことだ。そしてあなた自身が抱えている問題であるほうが好ましい。
-中略-
スタートアップのアイデアに関して使用したい動詞は「考え抜く」ではなく「気づき」である。 YCでは、創業者自身の経験から生まれ成長するアイデアを”Organic”なアイデアと呼ぶ。成功したスタートアップはほとんどすべてこの方法で始まる。
『How to Get Startup Ideas』 — いかにスタートアップのアイデアを得るか

これは結構残酷で、要は「方法論はない」と言っているわけだ。考えるな、然るべき準備ができていればそこに現れる、と。
「言ってることは分かるよポール。でもそれじゃあんまりじゃないか」と下手な映画の字幕のような感想を心に浮かべていると、そんなことはお見通しのようで、一応ポール・グレアムはアイディアを生み出すコツを述べている。

しかし、あなたがスタートアップのアイデアを探しているのなら、現状を当然のものとして受け入れることをやめ、物事に疑問を抱く必要がある
--中略--
あなたを悩ませるものには特に注意を払ってください。現状を当然のように受け入れることは生活を効率的にするだけでなく、生活をより我慢できるものにしてくれます。ですがもし今後50年以内に得られるものすべてについて知っていて、まだ持っていないのであれば、現在の誰かがタイムマシーンで50年前に送り返された場合と同じように、現在の生活がかなり制約されていることがわかります。何かがあなたをいらいらさせるとき、それはあなたが未来に住んでいるからかもしれません
How to get startup ideas(原文) - ポール・グレアム

つまり、日常生活において不満や違和感のアンテナを高めて疑問からアイディアの種をつくること。そして、不満が解消された状態を想像し、その未来にあって然るべきものを発想することがコツとされている。

結局の所、ビジネスアイディアを考えるのではなく問題に気づきやすくする工夫をせよ、という点で一貫している。

アイディアをセルフチェックする

悪いように見える アイディアのほとんどが、 ”ただ単に悪いアイディア” である
Startup Science 2018完全版 

ほとんどのアイディアは悪いアイディアであることは体感的にも頷ける。夜中に思いついて夢中で空想を膨らませたアイディアが、起きてみるとどうしようもないガラクタに見えることはザラだ。

一晩寝てすぐにダメさ加減に気付ければまだマシで、しばらく熱に浮かされ続けることもある。自分が思いついたアイディアは得てして子どものようにかわいく思えてしまうものだし、起業家はよりそういう性質が強い生き物なのではとも思う。いわゆる確証バイアスがかかり有利な情報しか集めなくなるので「良いアイデアかもしれない」という思いは強化されやすい。

という自覚が自分にもあるので、悪いアイディアを持って検証に走り始める前にセルフチェックできるようにしておきたい。

チェックリスト
①その課題は「特定の人が心から解決してほしいと思っているか」
②既存のカテゴリにハマらないアイディアか

③市場は十分に小さく、大きくなる可能性を秘めているか
④市場を独占できるか
今始めるべきか?過去と比べてなにが変化したのか?

①その課題は「特定の人が心から解決してほしいと思っているか」

日常の課題に目を向けていくとテーマは見つかりやすいかもしれない。だが、もちろん課題があればなんでも良いわけではなく、課題の広さと深さに注目する必要がある。多くの人が、なんとなく共感してくれる課題ではなく、特定の人が深く共感してくれる課題に取り組むべきだ。それが自分の課題である場合は、バイアスがかかりやすいので少なくとももう一人は同じ課題を持つ人を見つけておきたい。

スタートアップには多くの人が「わずかにほしいモノ」か、少数の人が「強く望むモノ」のいずれかを作ることができる。この場合、後者を選ぶことだ。後者のタイプのアイデアのすべてが良いスタートアップアイデアとは限らないが、成功したほぼすべてのスタートアップアイデアは後者のタイプだ。
How to get startup ideas(原文)- ポール・グレアム 

②市場は十分に小さく、大きくなる可能性を秘めているか

小さければなんでも良いわけではなく、そこから先に広げていくことができる市場でなくてはならない。ただ、最初から広がりを自覚するのは不可能に近い。ポール・グレアムはこの点に関して、

ただ『何が欠けている?』というフィルターを使うだけではだめだ。他のすべてのフィルターは切っておきなさい。『これが大きい会社になりえるか』というフィルターは特に。そのテストを実施するには十分な時間がある。しかし、そのフィルタを始めに使ってしまうと、多くの良いアイデアを排除するだけでなく、悪いアイデアに集中させてしまうのだ。
『How to Get Startup Ideas』 — いかにスタートアップのアイデアを得るか

と言っている。つまり、最初は分からんから考えてもしゃーないと。そして市場選択においては、明らかに大きいブルーオーシャンはなく、レッドオーシャンをひっくり返すテクノロジーか、ニッチから攻めるほかないとしている。

混雑した市場は実際には良い兆候だ。なぜなら、それは需要があることと、既存の解決策のどれも十分に良いものではないということを示している。スタートアップは明らかに競争相手がない、明らかに大きな市場に参入することはできない。だから成功するスタートアップは既存の競合がいる市場に参入することになるが、(Googleのような)すべてのユーザーを獲得する秘密の武器で武装したり、(Microsoftのように)小さく見えるが大きな市場へ参入する。
『How to Get Startup Ideas』 — いかにスタートアップのアイデアを得るか

テクノロジードリブンのスタートアップでないかぎり、Googleのように秘密の武器で武装できることは少ないのではないか。であれば、小さく見えるが今後成長する or 切り方を変えると大きくなる市場であることがおさえておくべきポイントのように思う。


③既存のカテゴリにハマらないアイディアか

本当に成功している企業というのは、既存のカテゴリーにはまらない、事業内容を説明しにくい企業なのです。
- Peter Thiel
1. 脱領域的でカテゴリがない
2. 適切な言葉がまだ無い
3. 創業者も真の意味がわかっていない
逆説のスタートアップ思考  

②の切り方を変えると大きくなる市場にも通ずるが、今の市場の枠組みで捉えられない企業こそ、大きく変貌する可能性を秘めている。ビジネスモデルが複雑である必要はなく、むしろシンプルであるべきだ。

顧客が抱えている課題は明確だがソリューションが既存のものと比べて大きなトレードオフがある(ex.相乗りサービスは安いが見ず知らずの他人の車に乗らなくてはいけない)といった点だ。この点は、様々な人が形を変えて述べている。

最も重要なルールが「逆説の構造」だ。この構造があるかどうかで、ビジネスモデルの新しさ、つまり「創造性」があるかが決まる。
「逆説の構造」とは僕の造語だが、そのビジネスにおいて「何が創造的なのか?」を考えるためのフレームワークのことをいう。

ビジネスモデル図解2.0
事業や新しいサービスを立ち上げるときに一番大切なことは、「儲かる」ことでもなく「新しいテクノロジーを利用している」ことでもなく「斬新なアイディアがある」ことでもなく「今このテーマがトレンドだから」でもなく、「従来の価値観をひっくり返すような(あるいは否定するような)新しい価値観の発見がある」ということなんですよね。
世の中は事業のタネで溢れているという件について

このように、○○は一般にAと思われているけど、敢えてBにすることでXXという新しい価値が生まれるという説明ができる状態こそが、とても良いシグナルである。

もちろん、そうでなければビジネスが成立しないということはもちろんない。だが、スタートアップとして他の人がやらない事をやることで急成長するという要件を満たす上では欠かせない条件の一つになるかもしれない。

④市場を独占できるか

独占のために必要なのは、
* プロプライエタリテクノロジー(特許技術)
* ネットワーク効果
* 規模の経済
* ブランド
- Peter Thiel

特許技術を持たない非テクノロジー系スタートアップにとっては、下3つが重要になる。言い換えれば、投資したら何が資産として蓄積されるのか?という問いに答えられるようになることである。

⑤今始めるべきか?過去と比べてなにが変化したのか?

なぜ二年前でもなく、二年後でもなく、今なのか。
- Sequoia Capital  あなたのスタートアップのアイデアの育てかた
最も大切なのはタイミングだったのです。成功例と失敗例の差はタイミングが42%占めました。チームと遂行力は2位で、アイデアの独自性は実は3位だったのです。
【書き起こし】「スタートアップが成功する主要因はタイミング」起業家ビル・グロースが提言

個人的にはこの問いが最も難しく、なおざりにしがちであるが、統計的には最も重要な論点だそうだ。
タイミングを考える上で、ライドシェアのLiftなどに出資しているUSのVC、NFXは以下のように要素分解をおこなっている。

スタートアップのタイミングを理解しやすくするために、クリティカルマスのスタートアップ理論と呼ぶフレームワークを開発しました。それは、製品や市場が一夜にして急速な変化を遂げる時期の転換点です。 3つの前提条件という最低限のしきい値があるときに、スタートアップの機会に対する重大な大問題が発生します。


①経済的推進力
②実現技術
③文化的受容
Why Startup Timing is Everything

具体例を挙げると、AirbnbやLiftは、経済的にはリーマンショックによって大量の空き部屋が生まれたり、失業者の増加が背景にあるとされている。また、技術的には例えば動画サービスの普及には通信技術の発達が不可欠だった。文化的な側面では、国内でメルカリが普及し中古品への抵抗が薄れ、二次流通の市場全体が活性化していくといった文脈が作り出される。

こうした例にファクトを補っていくことが説得力をもった「今やるべき」理由を作り出すことになると思う。ここが難しいんだけどね。

思ったこと

様々な観点でアイディアを強くすることはできる。しかし、それらの中心にはファウンダーの意思や原体験が必要だと、最近ひしひしと痛感している。どこかの誰かが欲しいものではなく、自分や周囲の人の問題を解決する、という起点に回帰し「大切な人を幸せにする」ようなプロダクトを生み出していきたい。

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