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決済手数料の外部流出を抑止!加盟店が採るべき戦略とは?

 こんにちは。マーケティング視点で読解力を高めるノートです。

 今回は、キャッシュレスの仕組みを採り入れることで負担感が強まっている加盟店側の決済手数料負担を抑止するための自衛策である自社Payの導入状況と利益留保の可能性について見ていきます。

 日本ではキャッシュレス決済が広がり、今後もますます多くのお客さんがキャッシュレス手段を利用して支払いを行うと予想されています。しかし、加盟店側から見ると、この動きは事業者へ支払う決済手数料の増加を引き起こし、経営を圧迫する要因となります。そのため、加盟店は自身の経営課題として、決済手数料の増加を抑制するための自衛策を取ることが予想されます。


1.使われれば使われるほど営業利益が目減る

 2022年に発生した円安、インフレ、社会情勢の不安定化や需給悪化によるエネルギーコスト急騰等のコスト増が企業の業績を圧迫しています。外部環境要因によるコスト増で利益が減少する中で、キャッシュレス比率向上による決済手数料の外部流出額増加は看過することができない頭の痛い問題になっています。

 2022年のスーパーマーケット年次統計調査報告書によると、全国の食品スーパーマーケットの平均営業利益率は1.4%であり、年商が1,000億円以上の場合は2.61%となっています。

 一方、QRコード決済の加盟店手数料は概ね2%〜3%程度に設定されており、一般的なクレジットカードの決済手数料の3%〜5%よりは低いですが、QRコード決済の利用が増えれば増えるほど、営業利益を圧迫する構図です。

 キャッシュレス推進によるレジの効率化や人時の削減など、オペレーションの効率化が期待できるものの、決済事業者への支払い手数料は規模が小さい企業になるほど負担感が大きいことがわかります。

2.自社PAYの導入による自衛の強化

 キャッシュレス比率の上昇という避けられない外部環境の変化に対応するため、無印良品は「MUJI passport(2020年11月)」、ユニクロは「UNIQLO Pay(2021年1月)」を導入していますが、2022年以降、食品スーパーマーケットでもブランド独自のキャッシュレス手段である「自社PAY」の導入が活発化しています。

<導入事例>
・2022年12月 カスミ 「ignica money」開始
・2023年2月 業務スーパー「Gyomuca」開始
・2023年3月 ヤオコー 「ヤオコーPAY」開始
・2023年6月 サミット 「サミット電子マネー」開始

 自社ブランドのキャッシュレス決済システム導入を支援する企業に対して、自社Pay導入小売は、キャッシュレス決済額の約1%程度のシステム利用料を支払うというビジネスモデルが採られています。

 このシステム利用料が、クレジットカードやQRコード決済の決済手数料に比べて低価格に設定されているため、自社PAYの導入は、加盟店にとって決済手数料の負担を軽減し、利益を確保する手段になりえます。
 キャッシュレス比率の上昇に伴い、このような動きが、小売業界における収益の維持、向上を図るための対策の一つとして注目されています。

3.自社Payの導入を後押しするソリューション

 オリジナルの自社Payを顧客に提供するための全体サービス設計からサービス導入支援、スマホ決済プラットフォームの運用などの機能を提供し、自社Payを検討している導入企業の負担を軽減する取組みとして、以下のソリューションが挙げられます。

 バリューデザイン社のクラウド型独自Pay(ハウス電子マネー)発行サービス「Value Card」は、業務スーパー独自の電子マネー機能を搭載した「業務スーパー」公式アプリで採用されています。

 インフォキュリオンによる、企業独自のPayサービスを構築するためのスマホ決済プラットフォーム「Wallet Station」は、ドラッグストアチェーンのツルハホールディングスが提供するスマホ決済サービス「HAPPAY(ハッペイ)」で採用されています。

 バーコード決済、ユーザー管理、バリュー・ポイント発行など、「オリジナルPay」の実現に必要な機能をワンストップで提供する、いわば黒子型の企業の存在が、現在の小売業における自社Pay導入を後押ししており、今後も、食品スーパーや、ドラッグストア毎に、自社小売の名称を冠したオリジナルPayの導入が広がっていきそうです。

4.自社Payの導入による利益留保効果SIM

 ここでは、安価なキャッシュレス手段である自社Payへの置き換え効果を見ていきたいと思います。以下の条件で利益留保額と営業利益率の改善効果を確認します

<条件>
・年商1千億円の食品スーパーマーケット
・営業利益率1.5%(営業利益15億円)
・キャッシュレス比率50%(500億円)

<現在>
・キャッシュレスの加盟店手数料率3%(15億円)
・加盟店手数料支払い額15億円

<自社PAY導入後>
・キャッシュレス支払いの50%を自社PAYに誘導(250億円)
・キャッシュレスの加盟店手数料(7.5億円)
・自社PAYのシステム利用料率1%(2.5億円)
・営業利益率2%(20億円)

 自社PAYの導入によりキャッシュレス決済額の一部を自社PAYへ誘導することにより、営業利益の改善効果が期待されます。具体的には、年商1,000億円の食品スーパーマーケットが自社PAYでの支払いを半分にする場合、営業利益が5億円向上し、営業利益率が0.5%改善すると予測されます。 

 このような効果を見込み、今後は、食品スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店を中心として様々な企業での導入が進み、近い将来、店頭では、大手の決済事業者のキャッシュレス手段と併存していくと考えられます。

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