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現場出禁になった時のハナシ その1

さわるものみな傷つけた

 この記事は、若気の至りが爆発してしまった頃の昔のハナシである。

 ワールドカップの日本戦が待ちきれなくて飲んで少し酔っぱらってしまいながら書いているので、後で見返すことがあれば死ぬほど恥ずかしい思いをするんだろう。でも、書いちゃう。酔っぱらってるから。

 スキルだけはあると錯覚してしまいオラオラのイケイケで、周りを全てバカだアホだと勘違いし、こんな簡単なコトも理解できねぇのかと見下しながら仕事をしてしまう、そんな時期はフリーランスになるような社会不適合者にはありがちなハナシだと思う。いや、あってほしい。オッサンだけなのか。だったらイヤだな。

都会の砂漠

 オッサンはインフラエンジニアなので構築フェーズと呼ばれるタイミングで案件に入るとサーバ構築というOSインストールを数十台も再現なくやらされるような罰ゲーム案件も存在した。
 今では考えられないがクラウドなんてものが無かった時代は必要なサーバは全て物理機器である。機械である。段ボール箱から部品を取り出しては1台1台手作業で組み立てて、サーバラックに納めてなんてことを数人で何十台もデータセンターの中で凍えながら組み立てるなんて作業もあった。外資の孫会社のOSやサーバだと既に仮想化なんて仕組みは実装されていて普通に使えたのだが高級品。やっぱり高くて買えないのよな。

 DVDを使いまわし必要なパッケージとIPアドレス、ホスト名を間違えることなく入れて、パスワードを設定、ケーブルを結線し、NWからログインできることを確認する。これで1セット。
 
 ブツの納期は遅れるモノと相場が決まっているが、その案件は本当にひどく、アレが足りない、コレが来てない、なんて状況なのにも関わらず、マシンに火を入れるところまでは1週間ぐらいてやって、とかいうアホな納期に追われるどうしようもない状況だった。

 今とは違いエコなんて眼中にないような世の中なので、サーバルームはガンガンに冷えていて、普通に凍える。しかもセキュリティがキビシイDCとなると背広の上着も剝ぎ取られる。ポケットにモノを入れて持ち込んだり持ち出したりを防ぐための処置なのだ。
 DCのフロア入場時と退場時に体重を測定され変化が多いとチェックされるという当時はあのDC以外では聞いたこともないような仕組みもあったりしてぶっ通しで2轍ぐらいして作業をした後になると乾燥したDC内の空気にさらされ続けるために体から水分がどんどん抜けて体重が数キロも減りチェックに引っかかるという残念なコトが起きるメンバーも出た。ちなみにオッサンは太ってるから半日でも起きた。

 チェックにきた警備員が入退室記録を見た後に憐れむよう向けてきた眼を未だに忘れられない。乾燥するから水分がでなくなってトイレも行かないのよな。フロアーを出た後、お茶とか飲むと、体に染み込むのが分かるぐらいまで乾燥する。そして、体のシンから冷える。
 この時に暖かいお茶は飲めない。自販機から出てくる暖かいお茶の缶は凍えた体には熱すぎて持てないから。それでも飲むと体の中から暖かくなってくる。冷たいお茶なのに。

 よく死ななかったよな、マジで。

ビフォアーアフター


 そうこうしていても、あまりの寒さに耐えきれなくなるが、服は着れないし納期はギリギリだし、という厳しい状況の中、やぶれかぶれでやってみた梱包材のプチプチをワイシャツの中で体に巻き付けるようにぐるぐる巻きにして、やっぱり取扱説明書よりプチプチの方が暖かいな、なんてやりだしたらもう止まらない。

 大量にある廃材のダンボールで風よけを作りはじめ、少しの休憩はそこでとるようになると徐々に風よけが壁になり屋根を作り始める。だって、寝てないんだもん。寒いんだもん。
 1人で入ると寒いけれど、2人で入ると空気が体温であたたまり暖かくなる。3人で入るともっと暖かくなり、作業している間のちょっとした待ち時間はその場所で待機するようになる。データセンターなんて寒くて寝れない場所なのに、そのスペースに入れば暖かくて眠れる。囲まれた壁のおかげで機械が出す大量のファンの音も遮断され少しだけ静かになる。
 
 なんということでしょう。
 匠の手によって本来は廃棄される廃棄物がよみがえり人々が休憩する憩いのスペースに・・・・・・・どう見てもダンボールハウスです

 風をしのげるから暖かいんだが、暖かいということは室温が上がる。室温があがるということは機械は冷えなくなる。
 当時最新式のDCはすごい。
 室温を監視しているセンサーが温度上昇を検知したらしく、警備員がやってきてDCのフロアに隠すことなく鎮座している「憩いの館」が発見され、構築チームがこっぴどく叱られるという醜態を晒すことになった。ただ、警備員さんの言葉はなぜかとても優しかった

 当然、元請けにも連絡が行き、OSインストールが完了した時点で、チームは解散となり、無事そのベンダーからは出禁を言い渡された。

 その時に一緒に作業をしていたチームメンバーは、全く別々の会社から来ていた派遣エンジニア達で、この件が元で仲良くなり、その後も別のベンダーやメーカー、お客さんと取引先、同僚や部下、といった形で立場も場所も現場も会社も変わりながらくっついたり離れたりしながら、ヤバイ失敗も共にすることになるのだが、その話は、またいつか。


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