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しくじり行為は心的行為

昨日に続いてフロイトの精神分析学入門。

言い間違いや読み間違い、あるいは計画や約束を忘れてしまうこと、また物を紛失したり壊してしまうという「しくじり行為」について精神分析学を用いて解説している。

誰でも経験するしくじり行為は、疲労や放心状態などの注意力の欠如がもたらすとしか考えられていなかった。

フロイトは、例えば言い間違いの内容に注目して、抑圧された意向の表出であると結論付ける。

約束を忘れてしまう事や、名前を忘れてしまう事、物を紛失してしまう事も、やりたくない行為や気に入らない物だったりする。表面上はそうでないフリをしているのだが。

その抑圧された意向を本人が自認する事もあれば、否認することもある。だが何気ないしくじり行為の裏には本人の意識しない意向(潜在意識)が関係していることが多い。

この本の素晴らしいところは、入門というだけに分かりやすいところ。そして多様な実例を挙げて話を展開するところ。何よりもフロイト自身が謙虚であり、何とか彼の切り拓いてきた精神分析学の理解を拡めたいという情熱を感じることができるのが素晴らしい。

全てのしくじり行為が「抑圧された意向の表出」で説明できるわけではない(本当に疲労から来る単なる言い間違いもある)と認めながら、そのしくじりの「内容」が選択された理由を、観察と洞察力で「潜在意識」(抑圧された意向)という発見に求め学問として築き上げた知性は、偉大である。

最新の脳科学で分かってきた事さえ、既にこの時代に彼が多くの観察と洞察で暗示しているものも多いのではないか?

人間は、いつも自分の意思で選択をして生きていると信じているが、本当は自分が意識していない意向の影響により、それらを選択させられているのかも知れないと感じさせられる。

続きはまた明日。いや、想定以上にわかりやすく面白いです、この本。

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