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携帯電話事業における「公正な競争環境」とは?

菅新内閣の武田総務大臣は、現状の携帯電話料金について「諸外国と比較すると高い水準だ。公正な競争環境を整備する」と述べたそうだ。

私には納得がいかない。日本は公正な競争環境ではないのだろうか?

その昔、電電公社の民営化によりNTTが誕生して以来、競争事業者が誕生し、日本の通信料金は劇的に下がってきた。携帯電話の世界においても、ARPU(Average Revenue per Unit)、つまり契約者当たり平均単価は、昔は月8,000円以上あったが、今は半額以下になっているはずだ。

MNO、つまり設備を保有してサービスを提供しているNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、そして楽天モバイルの料金ばかりを言われるが、さらに数百社のMVNO(仮想モバイル事業者)がおり、月額1,480円などの格安料金で提供している。これらを含めて全体的に言えば、めちゃくちゃ競争的な環境だと思うが。

すでに既存MNO3社の加入者数は減少に転じており、顧客はMVNOにどんどん移っている。そこでソフトバンクはY!モバイル、KDDI(au)はUQモバイルなどのサブブランドを使って、トータルで加入者数がトントンになるように、激烈な競争を繰り広げているのが実態だ。MNOの料金が高いというなら、MVNOに乗り換えれば良いだけの話。それこそ「健全な競争」である。

MNOの料金を過度に下げれば、MVNOビジネスが成り立たなくなり、潰れていくだろう。そのほうが競争環境を縮小することにならないだろうか。

総務省は通信料金と端末代金との分離を進めてきた。その結果、顧客はiPhoneなどのハイエンドな高価格端末になかなか手が出せなくなり、買い替え需要が大幅に減退し、市場は冷え込んだ。総務省が過度な口出しをしたことで、むしろユーザーの自由度や利便性を損ねていないか。

「諸外国と比較すると高い水準」というのも、首をひねりたくなる。各種割引サービスも加味した実態的な料金で比較できているのか?また日本の各キャリアは隅々まで使えるよう通信エリア品質の整備に力を入れている。海外に比べて高い品質のサービスを、相応の価格で提供することに問題があるだろうか?

大容量プランが高いという話もある。しかしながら、通信トラフィックをなるべくWiFiなどにオフロードしないと、通信キャリアのネットワークは破綻してしまう。大容量プランは高めに設定して、なるべくWiFiを利用するよう誘導するといった料金施策まで、政府が口出しすることだろうか?

一般消費者にとっては、今や生活必需品となった携帯料金を下げて欲しい、それはそうだろう。政府の支持率獲得のため、そうした消費者の意向を汲むことは理解できる。

しかしそれが日本の通信産業における「公正な競争環境」を本当に発展させるものなのかどうかは、政策担当省庁として、場当たり的な見方でなく、それこそ「公正な」目で見てもらいたいものだ。

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