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「自己責任」に対する違和感

特に最近目につくのが「自己責任」という言葉。もともとは金融業界で多用されていた言葉だと思う。相場や株価が下がるリスクも承知の上で金融商品を扱う、つまり下がった場合はそれを納得しろよ、という意味合いだろう。

ただしこれはちょっと違和感がある。自己責任を英語にするとtake your own riskだ。riskであってresposibilityではない。危険性、リスクをとるのであって責任を取るのではない。そもそもここからなんだかおかしい…

ネットの世界で「叩く」ことについては以前ポストしたが、この自己責任という言葉、あまりにも濫用されすぎているように思う。そしてそれは単にこの「叩く」ための道具、武器にしかなっておらず、金科玉条のごとく使われすぎている。そしてそれは大変醜く気持ち悪く私の眼には映る。

辞書で意味を調べてみる。自己責任。

自分の行動の責任は自分にあること。 自己の過失についてのみ責任を負うこと。

一方で自業自得という言葉もある。これも辞書で調べてみた。

自分の行為の報いを自分自身が受けること。一般に、悪業の報いを受けることにいう。自業自縛。

つまり人を「叩く」時に自己責任を使うのは誤用だ。「叩く」時に使うのは「自分のせいだろ、ざまあみろ」と意味合いで使われるはずなので、「自業自得」のほうがより適した使い方だ。

「自己責任」と言うと責任を取る意味なのでその内容は様々だ。謝罪するのか、関係者に損失補填するのか、あるいはダンマリを決め込むのか。

そもそも「責任を取る」ってなんなんだ、という話にもなる。役職に就いている人が辞任する、引責辞任なのか、お金を支払うのか、その責任の取り方は様々(どれも気持ち悪いものばかりだが)だが、結局「責任は取れない」んじゃないかと思う。例えば航空会社が飛行機墜落して「責任を取ります」と言っても補償金を工面するだけだ。死亡した被害者が生き返るわけではない。だから本質的に「責任は取れない」。

話が横道にずれた。私が言いたいのは言葉の意味を吟味せず、安易に「自己責任」を連呼する人々に対して違和感を感じることと、日本語の使い方のおかしさが日々ひどくなっているということだ。テレビのテロップの送り仮名や漢字の誤りなどは珍しくない、日常茶飯事であるし、誤った言葉の使い方を指摘する人さえ少ない。

言葉は文化だ。そして日本語は日本でしか使わない、極めてマイナーな言語であるため、日本語が廃れて滅びゆくのを目の当たりにするのは悲しいし、絶望感さえ感じる。



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