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中華SFアンソロ『時のきざはし』より 梁清散『済南の大凧』/凌晨『プラチナの結婚指輪』

■梁清散『済南の大凧』

 過去に起きた火薬工場の連鎖爆発事故に違和感を感じ、事件を引き起こしたとされるある技術者について調べていくと、隠された真相が次第に明らかになってくる。という謎解きの面白さがある作品でした。

 切れ物の研究者に対する、ただ好奇心が強いだけの一般人が主人公で、だからこそ一緒に一歩一歩真相に近づいていく様子に引き込まれてしまいました。

 彼一人では真相にたどり着くことはできなかったでしょうが、ただ好奇心が強いという事がもしかすると稀有な才能かもしれません。お国事情も違うのでなおさらなのかなと、ぼんやり想像することしかできませんが。

■凌晨『プラチナの結婚指輪』

 地方の農村出身の独身男性(30)が結婚仲介所に半ば騙されて3光年先の星に住む異星人と結婚する話。

 決して見目麗しいとは言えない異星人に怒りさえ感じるほどでしたが、甲斐甲斐しく世話をしてくれる姿に次第にひかれていきます。

 個人的にはSF版、『賢者の贈り物』というような話だと思います。プラチナの結婚指輪を贈るのは地球人側です。この健気な異星人の妻が贈るものは不意を突かれるものですが、本当に相手を思いやってのものだという温かさと寂しさが残ります。

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