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谷崎潤一郎の『検閲官』を読む 首相以上の或る方面とはみょうなことをおっしゃいますね

https://note.com/kobachou/n/nc0fd78453073

 
 やはりこのnoteを谷崎君だけは読んでくれているようで、「谷崎には思想がないと言われる」などと書いたそばからこの始末だ。『検閲官』は『初戀』という戯曲を巡って、T検閲官と作家Kの間でなされる甲論乙駁の芸術論・思想論の形式をとる。この『初戀』とは、その語られる内容から『戀を知る頃』をモデルにした設定に見える。無論登場人物の名前は異なるし、書かれていることもそのままではないが、これまでに書かれたうちでは最も設定が近いというだけだ。


 この作品にはまどろっこしい情景描写など一切なく、亞空間に言葉のみが交錯する。その中では天下国家が論じられ、「首相以上の或る方面」までがやり玉にあがる。悪い規則に従う役人は有害で、悪い規則を変えられないなら職を辞するべきだとまで云う。まことにその通りだ。あなたは卑しい人間だという。旧憲法下ではこの論法は露骨な天皇批判である。そしてこれは一人の真摯な芸術家と「われわれ」という権威との議論である。


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