ホラーかミステリか?「まほり」2023/07/12

夏が来る。
夏といえば書店にならぶ、〇〇の100冊
これは「100冊」ではないけれど、カドブン夏推しに選書されている。
ちょっと怖い話かもしれない。と思って手に取ったが、民俗学ミステリーとか古文書ミステリーとか、帯には銘打ってあって、ミステリーだと安心して購入。
怖い話は嫌いではないけれど、たまに読むと「失敗した」となる。読んだ後怖くて、後悔してしまう。

さて、ミステリーに分類されているこの本だが、私にとっては「怖かった」

まず、主人公が興味を持った都市伝説であるが、もうここから怖い。怖がりすぎだろうか。
都市伝説で、明らかなオチがない話って、かえって怖い。

ストーリー自体はきっとこうなるだろうなという予想を裏切らない、王道の展開だと思う。
悪く言えば予想通り。
でもそれがこの本の面白さを決して損なうものではない。
都市伝説の本当のところと、主人公の家族に関する物語の謎解きがストーリーの大半を占めるのだが、主人公がどんどん調査にのめりこんでいくさまが面白い。
古文書がたくさん出てくるが、古い資料についての考え方などもすごく勉強になったというか・・・無知のあまり、古い資料について、書かれた背景などへの考察が浅はかですぐに信じがちだった自分が恥ずかしくなった。
また、江戸の飢饉については想像以上に悲惨なものであり、教科書だけでなく、実在の史料もみてみないとわかったことにはならないのかもしれないとも思った。
調べていく過程で、登場する二人の登場人物がなかなかいい。結局この二人、正反対のことを言っているようで、実は同じところを目指しているような。

この本が面白かったのはもちろんだが、改めて、言語学と、そして郷土資料というもの、図書館の役割について興味がわいてきた。
こんな古い資料を調べるうえで、スムーズに資料を提供することができるか?広い知識が必要になりそう。
大学の図書館司書なら造作ないことなのかな?地元の資料館などと連携をとることなどもあるのだろうか。

「まほり」の意味が分かるところは、背中がゾクゾクした。(「まほり」について解説してくれる言語学者の先生のキャラクターには笑ってしまったけれど。アニメとかによくありそうなキャラだが、笑える。)

主人公が、どんどん古い史料を解き明かして、謎の本質に迫るさまは、まさに学ぶ、調べることの面白さそのものであった。
またラブコメ要素もストーリーに華を添えているといいたいが、ラブコメ要素がなければ、怖さ倍増で読めなかったかもしれない。
香織のキャラもなかなかによかった。

読みたい本がたくさんあってなかなか追いつかないけれど、「図書館の魔女」も読んでみたい。


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