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あそどっぐインタビュー9日目 その1 「『寝た集』の制作秘話」

わたしはあそさんが、もの作りするときの話を聞くのがすきだ。
あそさんが何をたいせつにしていて、
ふだん何を考えていて、どういう気持ちでいるか。
あそさんは自分からゴリゴリ話をするタイプではない。
だけど、そこに”作品”があると、イキイキといろんな話を聞かせてくれるのであった。

(2020年6月10日 収録分)

「ふーふー」

ほし: あの~、『寝た集』のおばさんて、だれが・・・選んだんですか?
あそ: 『寝た集』のおばちゃん、どれ?
ほし: あの~、「ふーふー」の(編注:食事介助のさい、熱いたべものを「ふーふー」してくれるのがおばちゃんだと、ちょっぴり複雑なきもち・・・というネタ写真が収録されている)
あそ: ああ!あれね、あの~芸人さん。いっしょにライブでてる。
ほし: あっ、へえ~!おばちゃん芸人なんておるんや?
あそ: あれはねえ、じつはオネエなのよ。
ほし: ・・・あっ!
あそ: ふふ。
ほし: ふふふ、そうなんだ!
あそ: うん、そうそう。ちょうどイメ-ジに合うなぁと思ってね、でてもらった。
ほし: あ、じゃああれかあ。ほかのキャストは、たぶん写真家さんが選んだんですよね?あの写真集にうつってる人って?
あそ: だいたいそうだね。
ほし: あのおばちゃんだけ、あそさんが?(笑)
あそ: わ、ぼくが選んだんだけど。
ほし: あ、そうなんだ。(笑)
あそ: (笑)
ほし: へえ~、そうそう。なんか、あのポジションにお願いするってけっこうハ-ドル高そやなあと思って。
あそ: せやろ。うん、やっぱね、本当の人にはお願いしづらいもんね。
ほし: そうですよね(笑)
あそ: (笑)うん。
ほし: え、よろこんでた?その「ふーふー」役の芸人さんは?
あそ: ああ、うん、よろこんでたよやっぱし。本にものるし。
ほし: あ~そっかそっか・・・でも気づかなかった。
あそ: (笑)けど、ホントのおばちゃんぽいでしょ?
ほし: うん(笑)
あそ: そうなのよ、うん。けっこう、いいの撮れたわ。

“多目的”トイレ

ほし: あの「多目的トイレ、多目的」っていうネタがあったじゃないですか?(編注:多目的トイレから、しばしば若いカップルが出てくることを受けて書かれたネタ)
あそ: ああ、はいはい。
ほし: あれって目撃したことあるの?(笑)
あそ: あれはね、けっこう障害者界隈ではあるあるなんだよね。
ほし: マジで!?
あそ: うん、けっこう体験したことある人多い。
ほし: へえ~!
あそ: カップルが出てくるっていうのは。
ほし: そうなんや! へえ~っ。
あそ: (笑)そうなんだよ。だから「家でしろよ」って思う。
ほし: (笑)
あそ: うん、「ちょっと辛抱せえよ」って思う。
ほし: (笑)どういう事情でそこで「しよう」ってなったんすかね?
あそ: ホントよねえ、もう、まったくさ-。
ほし: (笑)へええ~そうなんだ。じゃあそうか、多目的トイレであそさんが待ってると・・・カップルがでてくると。
あそ: そうそう。これはねえ、けっこうあるねえ。
ほし: どんな顔してでてくるの?
あそ: やっぱねえ、あの~ちょっと気まずそうに(笑)
ほし: (笑)
あそ: だからドアから出てくると、おるから、ぼくが。
ほし: うん(笑)
あそ: 「ああ」みたいなかんじで・・・気まずそうに、立ち去ってくよね(笑)
ほし: (笑)「どうもすんませ-ん」みたいに言ってきた人はいない?
あそ: いやそれもない(笑)
ほし: (笑)
あそ: で、けっこう気まずそうに、もう急いで立ち去るっていう。
ほし: (笑)へええ~。
あそ: うん、それをこっちはちょっとニヤニヤしながら・・・見守るみたいな。
ほし: (笑)マジか。それ音とか聞こえてくるの?
あそ: 音はさすがにわかんないね。
ほし: あ~、じゃ出てきてからわかるんだ、こっちも。
あそ: うん、そうそう。
ほし: (笑)マジか。
あそ: うん。
ほし: へええ~、じゃああれは、あの~ネタに関しては、障害もってる人が、わりと、笑うようなネタなんですね?
あそ: それもあるね。「あるある!」っていうかんじだからね。
ほし: へ~、マジか。知らんかった。
あそ: (笑)

 花束

ほし: あの、あそさんが花束もってる写真あるじゃないですか?
あそ: うん。
ほし: あれ、すごいすきなんですけど。
あそ: ああ、ありがとう。
ほし: うんうん。あれって・・・その~シチュエ-ションとか場所は写真家さんが用意するの?
あそ: あの花束はたしか、そうだったと思うよ。
ほし: へ~。
あそ: あ、でもね、『寝た集』はねえ、写真家さんと「どういうのを撮ろうか」っていうのを、けっこう前もってアイデア出ししてからぜんぶ撮ってんだよね。
ほし: へ〜!じゃ撮影はじまるまでにけっこう話し合ったんだ?
あそ: そうだね。毎回どの写真もぜんぶ、前もって「どうしよっか」っていう打ち合わせのもと、だね。
ほし: 1枚ずつ、話すの?
あそ: うん、もうぜんぶだね。
ほし: ・・・すると、撮る直前にはなして、撮る直前にはなして、・・・って繰り返していくかんじ?
あそ: え~・・・どっちもある。「こういうのを撮ろう」っていって、それに合う場所とか。町中で撮ってるのはある程度、写真家さん・・・が、撮りたくて撮ってるのがおおいかな。そのほかの部分は、けっこうぼくの、アイデアっていうか。
ほし: ふみふみ。
あそ: 花束とかも、ぼくの、その~・・・だいぶ前からやってた持ちネタのなかから。
ほし: あ~・・・「なんか花束もってると」・・・
あそ: 「もってると、死んだように見える」っていう。
ほし: (笑)
あそ: うん、それを、写真であらわそうって。
ほし: (笑)
あそ: もともとはねえ、写真にはそのセリフがはいる予定だったのよ。
ほし: へ~。
あそ: うん。全部ねえ、ぜんぶなんか、当てはめる言葉がまずあって・・・あの町中の写真以外、ぼくがプロデュ-スした写真はそれに合わせた言葉があるんだよね。
ほし: ほお。
あそ: あの〜・・・でまあ、あいだに入ってくれたプロデュ-サ-さんが「写真と言葉が、あんま合いすぎない方がみてて楽しい」と。
ほし: ふんふんふん。
あそ: だからわざとその~言葉と写真を、もともとセットだったのを、バラバラにして。
ほし: へえ~!
あそ: うん。だから最初はスト-リ-仕立てで。その~「花束をもってると死体みたいに見える」っていうののあとになんかモアイ像の写真を1コいれて。
ほし: うん。
あそ: で、なんか、儀式的な雰囲気をだして・・・みたいなのとかがあったんだけどね、最初は。
ほし: おお〜、制作秘話。
あそ: うん(笑)
ほし: へ~、そっか。なんかたしかに・・・わたしも絵本のワークショップ行ってたんですけど、「絵と文章があんまり近すぎない方がいい」ってはなしは、言われる。
あそ: ああ、やっぱそうなんだ。
ほし: おもしろいな、写真集もそうなんやね。
あそ: うん、そうみたい。そう言われて、「ああそっか」っていってバラバラに。
ほし: わたし・・・あの花束写真のあそさんの表情、すきなのよね。
あそ: ああよかった。
ほし: 表情ってどっちがつくるの?あそさんがもう、アドリブでやるの?
あそ: 表情はだいたい、まあお互いどういうコンセプトで撮るかは決めてるからそれを元に、アドリブでやって。
ほし: うん。
あそ: あとはもう、カメラマンさんがOKだすまでいろんなパタ-ンをやるかんじだね。
ほし: おおそっか。じゃあ撮れた写真からピックアップするのは写真家さんがやるのね。
あそ: そうそう。1回でけっこう何枚も撮るんだよね。で、ピックアップは全部写真家さん。
ほし: おお〜、知らんかった世界や。
あそ: で・・・あれねあの~、顔だけ隠してる写真があるんよ、なんか電柱かなんかで。
ほし: うんうん。
あそ: で、そん時はぼく顔かくしてるから、ただ佇んでたら。
ほし: うん。
あそ: あ~の~・・・「いま、休んでない?」って言われて。
ほし: へえ~、うん。
あそ: うん。むこうから見えないんだよ、顔。
ほし: うんうん。
あそ: だからもう、ちゃんと見えてなくても、ちゃんと演技しとかないと「わかる」と。
ほし: へえ~。
あそ: うん(笑)だから、あん時もちゃんとコンセプトはあった。どんな顔だったか覚えてないけど。見えないときも、顔を一応つくってやってた。
ほし: おもろいなあ、わかるんや。
あそ: うん、すごいでしょ。わかるんだって。
ほし: へ~、ふふ、すごい。
あそ: で、ちゃんとねえ、顔をつくった瞬間、シャッタ-音が聞こえるんだよね。
ほし: すっげえ!(笑)ホント?
あそ: うん。だからすごいよねえ。
ほし: へえ~!エキサイティング。
あそ: うん。
ほし: そらあ、いっしょに仕事しんとわからんすねえ。
あそ: うん、おもしろかったね、あれはね。
ほし: うんうん。へ~、おもろいなあ。
あそ: うん。
ほし: そうかあ。あの、花束の顔ってどういうコンセプト?「死んでるっぽく」ではたぶんないですよね?
あそ: そうだっけ?まあでも「死んでるようにみえる」で撮ってるから「おだやかに死んでるかんじ」ではやったかな。
ほし: あ、ああそうなんだ(笑)なんかちょっと口がチュってなってるじゃないですか?
あそ: そうだったっけ?どんなんだったっけ?
ほし: あれ? じゃああれは・・・あそさんの寝顔のデフォルトなのか?もしかして(笑)
あそ: たぶんそうじゃない?
ほし: あ、そうなんや。
あそ: うん、いちおう「死んだようにみえるを撮ろう」ってことで撮ってるから。
ほし: へえ~。
 
(あそ: 吸引して)
 
ほし: ・・・わたし、あの写真みて「カワイイな」って思ったんですよ。
あそ: ああ、うん。ありがとう、ありがとう(笑)
ほし: あそさんがおだやかに死んでる顔をカワイイってかんじるんだなわたしは・・・(笑)
あそ: うん、いい、いいと思うよ、うん。
ほし: (笑)
あそ: いちばん言われたい言葉は「カワイイ」だから。
ほし: そうなんすか(笑)
あそ: うん(笑)
ほし: そうだったの?(笑)
あそ: うん(笑)
ほし: へえ~・・・そっか。聞けてよかったなあ。
あそ: (笑)
ほし: なんかあの表情に込められた思いみたいなのがあるんだろうけど、なんなんだろうなあってすごい気になってたんですよ。
あそ: うんうん、なるほどね。まあでも一応ギャグで「まずは死んだように見える」ってことだから。ただの死体よりもちょっとギャグでやってるっていうか、「ちょっとおもしろみを持たせよう」っていうのはしてると思う、けどね。
ほし: ああ、そっかそっか。

次回、 「無視はつらいよ

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。

あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「あそどっぐ、ヘルパーさんと飲みにいくの巻


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