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私は今日も、本を運ぶ。


ああ、また読めなかったなぁ。

旅先や出先から帰ってきて、スーツケースやかばんを開く。出かける前に、わくわくしながら荷物に詰め込んだ本が、旅の前と変わらずかばんの隅っこにいる。少しの罪悪感と、本を連れだった満足感を感じながら、本を再び本棚へと戻す。

きっと読まないだろうに、どうにもやめられない。かばんに本をしまうとき、「読むぞー!」という当てにならない意気込みだけは、ある。(苦笑)

そんな経験はありませんか・・・?

何度も何度もそんな行為を繰り返してしまうちに、これをなんと呼べばよいのだろう?という気持ちが芽生え、こんなツイートをしてみました。

本を運ぶだけなので「運読(うんどく)」なんてどうだろう、とつぶやいてみると、全国各地の本の運び屋さん(笑)から、たくさんの共感の声や、こんな呼び方はどうだろう?というコメントが集まりました。

ああ、わたしだけじゃなかったんだ・・!と多くの同志を見つけた嬉しさと、色々な方の運読の心境を垣間見れて、とても楽しくなってしまいました。これは「積読」のように、ひとつのジャンルになるポテンシャルがあるのでは!?と感じたので、今回集まった呼び方を、まとめてみました。たくさんの反応、ありがとうございます・・!!!

「荷物の中にしまわれた本が、ただただ移動しただけの現象」なんて呼ぶ?

人気だった呼び方や、気になったものをご紹介します。(拾えきれなかったものもあります。ごめんなさい・・!全部楽しく拝見しています。)

人気強し!「運読」「運ん読」と書いて、「はこんどく」

みももさんが書いてくださった、「はこんどく」が「積読(つんどく)」のように、「○○しとく」という意味にも重なるため、とても共感・人気を集めていました。

(とりあえず)はこんどく。
(読むかもしれないから)はこんどく。

語呂がいいのはもちろんのこと、本を連れていきたい気持ちや、今回こそ読むかも!?というちょっとした期待感も含まれる感じが、良いなぁ〜と思いました。

持っていると、なぜだかホッとする。「お守り」


かばんの中に本が入っている安心感、ありますよね。ないとちょっと不安になるような・・・。「保険」という方も何人かいらっしゃいました。

かわいい本には、旅をさせよ。「荷本旅行」

うまい!!座布団一枚!と言いたくなるようなアイデアでした。なんだか、物語がはじまりそうなネーミングで、素敵です。

ダンベルなのか、本なのか。「筋トレ」

あえて、かばんを重くしているんだぞ!と言わんばかりのストイックさ。なぜか、分厚く重たい本を持ってきてしまう時、あります。もはやそれは、限りなく自然な筋トレ。(かもしれない。)

持っていることに意味がある。「持読(もっとく)」「入読(いれとく)」

とりあえず、もっとこ。いれとこ。そう思ってかばんに詰め込む。気づいたら荷物がすごく重くなっていて、階段登ってるときとかに後悔する・・・。それでもいいんです。持っていることに意味があるんだ!

そのほか、いろいろ。

・旅読
・本の旅
・歩く図書館
・埋読 →鞄に埋まるから
・お懐読(おかいどく)→懐に持ち歩くイメージ
・移本(いほん)
・客書(かくしょ)
・寝読 →結局電車内で寝てしまう
・本のお散歩
・運とこ書
・読っこい書

※上記プラス、拾いきれなかったもの、追加などはツイートのリプ欄や引用RT

たくさんのアイデアを頂き、とても楽しかったです。ありがとうございました。個人的には「運読」(はこんどくorうんどく)がしっくりきました。しばらく「運読」と書き、はこんどくorうんどく、と呼んでみようと思います。

「運読」あるある①旅先から帰るときは、本が増えている。

呼び方以外にも、みなさんからたくさんの"あるある"が届きました。「わかる〜!」と思わず唸ってしまったあるあるたちも、せっかくなのでご紹介します。

旅先にあるんですよね。思わず吸い込まれてしまう、素敵な本屋さんが・・・。

「運読」あるある②本出した時に限って、読めそうになる

本を出した日に限って、間違いなく読めたであろうタイミングが発生する。運読七不思議の一つに入れたい。

「運読」あるある③途中まで読んでいるから本を変えられない。

運読本の中でも、常連さんがいますよね。

「運読」あるある④運読本は、ボロボロ。

読み込んだわけでもないのに、めちゃくちゃ味わいでちゃうやつ。

「運読」あるある⑤結局、疲れて寝る。

夜ホテルで読もう〜なんて思ったら寝落ちして、早起きして読もう〜なんて思ってたら二度寝して。これも、旅の醍醐味。と自分に言い聞かせる。


なぜこんなにも、本を運んでしまうのか。

意思が弱いのだ!と言われればそれまで。なのですが、すごく惹かれるツイートを見つけました。

「まるでその世界や好きな登場人物とおでかけしているいみたいで好き。」

・・・・・!!す、すてき!!!

確かに、本を旅やおでかけのお供に持っていくのは、その行為を通じて、自分の世界と本の世界をつないでくれるような気がするんですよね。

だからこそ私は、今日はこの本を連れていきたい気分、この本をあの場所で読むと、何か感じるかもしれない。とか、そんな風に思ったりします。

人によって、いろんな動機があると思います。この本を持っていると元気が出る、勇気がでる。ただただ、読むのを心待ちにしている。あまりに楽しみすぎて、読む機会をうかがいすぎている、などなど。

私は運読を繰り返しすぎて、なんて自分は意思弱人間・・・。読まなくてごめんなさい。と、罪悪感を感じることもしばしば。が、なんと小説家の方からこんな嬉しいコメントを頂きました。

作者の方からもそんな風に言って頂けるなんて!これからどんどん運読しちゃうよー!と嬉しくなりました(笑)

ただ、読みたい、だけでなく、この場所につれていきたい。何を連れて行こうか?と選ぶ時間も楽しい、旅のお供としての本。そんな運読の動機があってもいいなぁ、と感じます。

運読本のススメ。旅先に運びたい本と、行きたい場所。

最後に、この本を連れていきたいな〜と、密かに楽しみにしている本と場所があります。ちなみに私は本は好きですし日常的に読みますが、すっごく読書家というわけではありません。

なので、「お前ミーハーかよ!!」とツッコまれるかもしれません(笑)(どうかそのツッコミは胸の内に・・・。)知識不足で恐縮ではありますが、私なりの運読本と、運読場所を考えてみました。ちらっとご紹介。

レモンの島に、檸檬と共にゆく。

広島県尾道市にある小さな島「生口島」。しまなみ海道の通り道でもあるこの島は、瀬戸内海屈指の柑橘類の産地で、なんとレモンの生産量は日本一!まさにレモンの島なんです。

島の瀬戸田という街には、「レモン谷」という美しいレモン畑が広がり、その向こうには、のどかな瀬戸内の海が広がっています。

レモンの島のスローな島旅のお供に選びたいのは、梶井基次郎の『檸檬』。(さっそくベタかよ!というツッコミは受け付けておりません!笑)

レモンの島で、檸檬を読んで、レモンスカッシュ(あるかは不明)を飲んだり。しかし私には、日中は海景色に見とれながら島をあちこち歩き回り、夜はホテルで疲れ果てて寝てしまう、そんな未来が見えます。(遠い目)

最近この島には、ホテルや複合施設が続々オープンしていて、とっても盛り上がっています。実は、これが瀬戸田に行きたい大きな理由のひとつでもあります。コーヒーのロースター ・ホテル・ 観光案内所・食堂などが一同に集まり、とっても楽しいスポットになりそうです。今年訪れたい場所、NO.1です。

長野県上田の散歩には、池波正太郎を。

食通としても有名な池波正太郎のエッセイ、『散歩のとき何か食べたくなって』に実際に出てくるお店が、長野県の上田という街にあります。「べんがる」という昭和39年創業の老舗のカレー屋さんです。

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実は、先日長野への出張の帰りに上田の街により道をして、数日間滞在しました。地元の人に愛される商店街、喫茶店、100年以上続くミニシアター、城下町の雰囲気が残る街道。新しく若い人たちが始めたカフェやバー。上田の街には、新旧小さくとも個性的で、この街でしか味わえない『らしさ』を纏う店が集まっていて、非常に魅力的な場所でした。

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前々から「べんがる」の噂を耳にしていたので、迷わずカレーを注文しました。シンプルだけれど、玉ねぎとお肉の甘みと旨味がぎゅっとつまった欧風カレーは、思わずハマる味。口に運べば運ぶほど、次の一口が恋しくなるような味わいです。

池波正太郎のエッセイに出てくるということは知っていたので、しまった、持ってくればよかったなぁ、と後悔しました。なので、次こそは運読するぞ!という気持ちを込めて・・・・。

北海道の秘境に、村上春樹をたずさえて。

ずっと憧れていて、行きたいなぁと思っているホテルが、北海道北部の美深町という場所にあります。その名も「青い星通信社」。

宿の名前から滲み出る詩的さが、気になって気になって。一体どんなホテルなんだろうか、と長年片思いしています。HPには以下のようなコンセプトが。

小説家・村上春樹の代表作の一つ
『羊をめぐる冒険』の舞台のモデルともいわれる
北海道北部の静かな町、美深町。
その草原の中に
ゲストルーム3室だけの
ささやかなホテルがオープンします。
物語の気配が立ち上る石煉瓦積みの建物。
そこは美しく深い響きの
風の歌を聴くために
用意された場所です。

※HPより引用

HPには雄大で美しい写真と文章が並んでいるので、ぜひじっくりと見てほしいです。この宿のある美深町という場所は、村上春樹 『羊をめぐる冒険』のゆかりの地なんだとか。ホテルに併設されている"書斎"には、もちろんこの小説が置かれており、他にも現代日本文学を代表する小説の作品や、芸術性の高い絵本やコミック、画集や写真集も揃えられているそうです。

人が旅に出る理由はさまざまですが、物語が生まれる土地である美深町への旅、いわば“ストーリー・ツーリズム”の終着点にある場所で、旅する人は自分だけの物語と出逢うのかもしれません。

(HPの"書斎"の説明ページより引用)

「ストーリー・ツーリズム」
物語が生まれる(生まれた)場所への旅。

「なるほど、そんな考え方があるのか」と、ますますこの宿の方たちの素敵な感性と言葉に惚れ惚れしてしまったのですが、私が運読したくなる理由は、まさにこれだなぁ、と感じました。

旅先の物語に、自分の物語を重ねて。そんな楽しみ方ができるのも、運読の魅力かもしれません。

私は今日も、本を運ぶ。

旅に本を連れていくわくわくや、本を携えている安心感を感じたり・・・。荷物の重さを感じちょっぴり後悔しつつ、結局今日も本を運んでしまします。

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ちなみに、私の最近の運読本は、西国分寺にあるカフェ クルミドコーヒーのオーナー影山知明さんの「続・ゆっくり急げ」です。途中まで読んだものの、その先を大切にじっくりと読みたい!と思いすぎて、中々かばんから出せないでいます。読むときは、経済合理性の外側にあるような、優しい空間の中で読みたいと思っています。

みなさんの運読本も、聴いてみたいです。

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