メメント・モリ

季節が移ろっていく時はいつも切ない気分になる。今まであった日常が変わっていくのがどこか寂しい。それが例え憎たらしい暑さや手足を突き刺す寒さだったとしても過ぎて日常から失われていく時には何故か愛おしくなっている。
時は平等に全てを変えていく。人も、物も、心も。もし自分だけが止まったとしても周り全てが変わっていくのだから結局影響されて自分も変わっていく。変わることを避けられない。変化に対してはどうしても恐怖が付きまとう。分からないから。人が、物が、心がどうなるか分からないから。その恐怖から慣れ親しんだ場所を好み、失う事を嫌う。
しかし悲しいかな、人間が知覚できる事の中でこの世に失われないものはない。過ぎた季節はどうしたって戻らない。一周してきたのは同じ名前の別の季節。ひと夏の思い出はかけがえのないモノでないといけない。

そして今持っている命でさえいずれ失う。遠い未来の事だと思っているがそれは明日突然やってくるかもしれない。昨日元気に笑ってた真後ろの同級生が朝来るとこの世にいなかったなんてこともあった。二十歳になったら飲み会しようと言ってくれた常時ハイテンションのネッ友がいきなり一人で逝ったこともあった。こんな体験をしていると案外自分の番は近いように思ってしまう。
でも時間があるかないかはあまり重要じゃない。大事なのは避けられない最後があるという事。生きている間何をしていたかに関係なく、時は平等に終わりを運んでくる。

だからせめて後悔しないようにしたい。今際の際で「楽しかった」と笑いながら終われるようにしたい。必ず終わるものなのだから楽しんでいたい。何をするにも楽しむことが優先だし「楽しい」より「苦しい」が上回ったらその時点で止める。苦しむために生きてないから。
失われないものが無いように二度来るものもこの世にない。完璧な再現性を持っているのは架空の物だけ。二度と来ないこの瞬間を全力で味わい尽くしたい。そうしていつも物事の物差しは「楽しそうかどうか」で決める。全ては終わっていくのだから。


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