見出し画像

野鳥撮影の履歴書 #1【フィルム一眼時代】

 好奇心旺盛だった中学時代、写真にのめりこんだ時期があります。家にあったのが父親の「Canon PELLIX」という一眼レフカメラ。少し変わったカメラで、ミラーが普通のミラーではなく、ペリクルミラーという透過式のミラーで固定式でした。ミラーショックがない、ファインダーがブラックアウトしないという長所がありますが、入ってくる光をフィルム面とファインダーに分けるため、ファインダーが暗くなる、フィルムを露光させる光が少なくなるという短所もあります。形から入りたい自分にとっては、ペンタ部に「Canon」というロゴが入っていないボディは気に入りませんでした。ガキですねー。

Canon PELLIX

 その頃、キヤノンからは「A-1」という中坊の心をつかむ超絶にカッコいい機種が発売されました。三宮センター街のコヤマカメラ(いまはもうない)でカタログを手に入れて飽きずに眺めていたのを覚えています。10万円を超えるカメラを買ってもらえるはずもなく、そのうちカメラ熱も冷めてしまいました。ただ、この時期、強烈にあこがれたキヤノンのカメラ。今、キヤノン党であるルーツはこのあたりにあるように思います。

Canon A-1

 働き始めて手に入れたカメラが「Canon EOS630」。当然ながらフィルムカメラです。キヤノンはFDマウントからEFマウントへ移行しており、ボディも様々な露出モード、AF、モータードライブ内臓と格段に進化していて、さらに値段も下がっていて驚いた覚えがあります。

Canon EOS630

 鳥を見始めて、誰もが思うように写真を撮ってみようと思い立ちました。フィールドで出会う鳥達は双眼鏡や望遠鏡を使うと実に魅力的に見えます。その見え方のまま写真に残せたらなんてすばらしいことだろう。図鑑にはそんな写真がたくさん載っているのです。
 ただ、明るい超望遠レンズは半端なく高く、思い付きで買ってみようなんてできるはずもありませんでした。その頃シグマから販売されていたのが「SIGMA AF TELE 500mm 1:7.2 マルチコート APO」です。

SIGMA AF TELE 500mm 1:7.2 マルチコート APO

 いくらだったでしょう?10万円はしなかったと思います。これなら買えそうだ。フルサイズのフィルムカメラだから換算も何も素の500mm。喜び勇んで撮りまくりました‥が、撮れた写真の出来には心底がっかり。レンズのせい?いや、十分でない三脚、手振れ補正のないシステム、上げられない感度、撮れる枚数の制限‥今、私の撮影を補ってくれているものが何もない中で、自分は全く無力でした。
 ざっくりいうと、リバーサルフィルム(スライド用のフィルム)が1,000円、現像が1,000円の計2,000円で36枚撮影できます…いや36枚しか撮影できません。ネガフィルム+同時プリントでも同じようなものです。そして確認してみたら1枚も残す価値のあるカットがない、なんてこともざらでした。現像やプリントが上がってきて、1枚も残せず2,000円捨てることを繰り返すうちにだんだん心が折れてしまいました。野鳥写真は自分には無理という思いが強くなって、撮るのはあきらめてしまいました。
 下は当時撮った写真で数少ない見るに堪えるカットです。

セッカ 1992/07/12 神戸市西区神出町
Canon EOS630 SIGMA AF TELE 500mm 1:7.2 マルチコート APO


この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?