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公園なのに「東遊園地」 進化する神戸のオアシス

ご訪問ありがとうございます、「ぶらっくま」といいます。
突然ですが、神戸市の都心部・さんのみやにある「ひがし遊園地」をご存じでしょうか。神戸市民でなくても、下のような光景に見覚えがある方は多いのではないでしょうか。

灯籠に火がともされ、浮かび上がった「1995 むすぶ 1・17」の文字=2023年1月17日早朝、神戸市中央区加納町6の東遊園地

この写真は、阪神・淡路大震災から28年となった今年1月17日早朝、神戸市などによる恒例の追悼行事「1・17のつどい」が開かれた東遊園地の様子です。灯籠が暗闇に浮かぶ中、地震発生時刻の午前5時46分に参加者が黙とうしました。

今年の灯籠の文字は「むすぶ」でしたが、これは公募で毎年変わります。敷地内には、犠牲者の名を刻んだ「慰霊と復興のモニュメント」などの震災関連施設もあり、震災を機に始まった光の祭典「神戸ルミナリエ」の会場の一部としても利用されています。

上の写真が普段の東遊園地(※現在は再整備中のため状態が異なります)。かつては土のグラウンドでしたが、市が2015年度から芝生化を進めました。平日は近隣オフィスのビジネスマンらの憩いの場、休日は親子らの遊び場やイベント会場として親しまれ、神戸の都心部のオアシス的な存在です。

と、ここまで読んで、疑問に感じた方もおられるかもしれません。「やっぱり公園やん」「なんで遊園地なん」と。

確かに現代でいう(テーマパーク的な)遊園地とは違いますね。ただ「遊園地」の名が付いた当時にさかのぼると、「公園」の一言では片付けられない歴史があり、現在も変化を続けています。その変遷をご紹介します。

近代スポーツ「輸入」の窓

1914(大正3)年の東遊園地。当時は「内外人遊園地」などと呼ばれた。写っているのは、神戸や、他の開港都市の居留外国人によるサッカーのインターポートマッチ(港対抗戦)とされる

 日本の近代スポーツの源流をたどれば、多くが神戸と横浜に行き着く。開港以来、さまざまな欧米文化を海外から吸収し、日本全国に広めた。その橋渡し役を担ったのが、居留外国人たちだ。
 神戸に外国人スポーツクラブ「神戸レガッタ&アスレチッククラブ(KR&AC)」ができたのは、開港から2年後の1870(明治3)年。英国の薬剤師で実業家アレキサンダー・キャメロン・シム氏(1840~1900年)が設立した。
 当初は東遊園地にグラウンドがあり、ゴルフやサッカー、ラグビー、テニスに興じた。海でもボートや水泳が行われ、クロールの泳法は、ここから日本人に伝わったとされる。

2017年1月1日付朝刊記事より抜粋

かつては開港に伴って来日した居留外国人たちがスポーツに興じる広場でした。当初は外国人専用でしたが、やがて日本人チームとの交流試合も行われるようになり、日本での近代スポーツ普及に大きな役割を果たしました。

外国人居留地の「東」に接することから、1922(大正11)年に現在の「東遊園地」という名称になりました。ちなみに当時の「遊園地」という言葉は、今の「公園」のような意味だったとされます(「やっぱり公園やん」というツッコミが入るかもしれませんが)。

「安藤建築」の図書館が誕生

天井まで壁一面に絵本や児童文学書などが並ぶ=神戸市中央区加納町6の「こども本の森 神戸」

 建築家の安藤忠雄さんが手掛け、神戸市に寄贈した図書館「こども本の森 神戸」が3月25日、神戸・三宮の東遊園地に開館した。阪神・淡路大震災の復興事業に携わるなど、神戸に思い入れが強い安藤さんが市に寄贈を提案して実現。名誉館長には、詩の朗読を通じて震災の記憶の継承に取り組んできた俳優、竹下景子さんが就任した。
 市が館内に並べる本や運営資金の協力を募ったところ、市民や企業、団体から約2万冊、寄付金も目標を超える1億5千万円超が寄せられた。当初の蔵書は約1万8千冊で、将来的に2万5千冊まで増やす予定。本は借りられないが、屋外のウッドデッキや東遊園地内に持ち出して読めるのが特徴だ。
 入館無料。午前9時半~午後5時。月曜休館。公式サイトで予約(抽選)が必要。

2022年3月25日付夕刊記事より抜粋

新型コロナウイルス禍を受けて事前予約・時間入れ替え制になっていますが、子どもだけでなく、誰でも利用可能。私も、春の陽光を浴びながら、童心に返って本の世界に没頭したい…。記事にあるように、ウッドデッキもあります。

屋外のウッドデッキに本を持ち出し、読書を楽しむ子どもたち

もちろん建物そのものも魅力です。コンクリート打ち放しの壁、隠れ家や秘密基地のようでありながら開放的な空間…。「安藤建築」好きにはたまらないですね。兵庫県、神戸市には安藤さんが手がけた建物がほかにも数多くあるのですが、それはまた別の機会に。

4月7日にリニューアルオープン

新たに整備される「芝生ひろば」のイメージ(神戸市提供)

 神戸市は、再整備中だった東遊園地が4月7日にリニューアルオープンすると発表した。カフェなどが入った施設が新たに誕生、憩いの場としての機能も充実させるなど装いは一新される。
 三宮エリアの再整備事業の一環で、2021年11月から改修工事が行われていた。新たに開館するにぎわい拠点施設「アーバンピクニック」には、カフェレストラン(70席)や公園内で読書を楽しむための図書スペースが入る。公園中央部の「芝生ひろば」(約4千平方㍍)は従来より面積を3割ほど拡大。日差しよけの屋根付きベンチやバリアフリートイレなどを設けた。デッキテラスが広がる「見晴らしひろば」からは公園全体が一望できる。
 4月15日には、東遊園地をメイン会場としたファッションショー「神戸コレクション」を開催。同22日からの毎週土曜日は、農水産物を生産者が販売するファーマーズマーケットが予定されている。

2023年3月10日付朝刊記事より抜粋

目下、上の記事にあるリニューアル工事が大詰めを迎えています。
日本の近代スポーツの起点、震災の記憶継承の場、市民や観光客らが憩うスポットと、さまざまな顔を持つ東遊園地。神戸での観光やショッピングの合間に、ちょっと立ち寄ってみてはいかがでしょう。

<ぶらっくま>
1999年入社。神戸出身の私にとって東遊園地は、「神戸まつり」の会場としても思い出深い場所です。新型コロナ禍で3年連続延期されましたが、今年は5月28日に4年ぶりに開催される予定です。東遊園地の隣を走る大通り「フラワーロード」でのパレードを含め、港町に久しぶりに祝祭のにぎわいが戻るのが今から楽しみです。