ようやく朝夕の涼しさを感じられるようになりました。ひときわ暑かった今年の夏は、日陰を選ぶように歩きましたが、9月に入り、道ばたに咲く花や、青くて高い空をゆったりとした気分で眺められる日も増えました。今回のテーマは「秋の七草」です。七つすべての名前を挙げることができますか。歴史ある草花を、播州人3号が紹介します。
「春の七草」と比べて、紙面に登場する機会が少ないように感じます。
「かゆ」として食べないためでしょうか。起源も春と秋とで異なります。
春の七草を食する習慣は古代中国から伝わり、食べると、その年は無病で過ごせると言われてきました。
一方、秋の七草は、教科書にも登場するあの歌人の詠んだ歌に由来するそうです。
「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花また藤袴 朝顔の花」
万葉歌人の山上憶良です。
歌に詠まれた順番で、記事と写真を紙面に探してみました。
①萩の花
秋風に揺られ 神戸・明光寺
②尾花
困ったことになりました。憶良の歌に出てくる2種目の「尾花」が紙面に登場していません。
花の写真では「オオバナミズキンバイ」「オオバナカリッサ」しかヒットせず、ひやりとしましたが、尾花とは「ススキ」のことでした。
神河・砥峰高原 日差し浴び輝く穂波
90ヘクタールの草原、ススキ見頃
③葛花
クズ 紅紫色の花 鮮やかに
ブドウに似た甘くて上品な香りがする、と別の記事にありました。
三木山森林公園は1993年、甲子園球場の約20倍、約80万平方メートルの広大な敷地に造られました。当初は人工的な公園が築かれましたが、昭和30年代の里山環境を復元しようと職員らが立ち上がり、「原風景」とともに多様な生き物たちも見られるようになっています。
次も同じ三木山森林公園からです。
④撫子の花
カワラナデシコ 薄紫色のかれんな姿
七草の名付け親とも言える山上憶良ですが、数年前、にわかに注目された時期がありました。
万葉集に収められた憶良の歌が、「平成」に代わる新元号の有力候補になったためです。
候補名は「|天翔《てんしょう》」。次の歌の一節から取られたようです。
「天翔りあり通ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ」
採用されていれば「『天翔』の由来となった歌を詠んだ山上憶良が」と「秋の七草」の記事にも加えられていたでしょう。
⑤女郎花
秋風ふわり オミナエシ 三木山森林公園
⑥藤袴
こちらの花は花単体ではなく、美しいチョウとともに紹介されることが多いようです。
渡りのチョウ しばし休息 神戸・摩耶山
⑦朝顔の花
夏休みの課題で育てたアサガオではありません。
アサガオは憶良の時代、中国から渡来しておらず、歌に詠まれた「朝顔」を「桔梗」とする説が有力のようです。
香美 青紫色の花 楚々と
遍照寺でキキョウ満開
花の写真と名前は一致していましたか。
秋の七草の覚え方があるようです。
草花の1字をとって「オスキナフクハ」だそうです。
<播州人3号>
1997年入社。植物に詳しくありませんが、ときどき気になる花と出合うことがあります。以前は図鑑にでも当たるしかありませんでしたが、最近はスマートフォンの助けで簡単に種類が推測できます。スマホにはシダレウメ、ジューンベリー、ナツツバキ、オオキンケイギクなどが保存されていました。出勤途中に見かける花ばかりで、自分の行動範囲の狭さが分かるようです。
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