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想いのたけ

【あなたに書いてほしい物語】(診断メーカーからの創作)
「あなたに秘密があるように」で始まり、
「大人になって気付いた」がどこかに入って、
「あの頃の自分を許せる気がした」で終わる物語。https://shindanmaker.com/851008


あなたに秘密があるように、
わたしにもひとつだけ、秘密があるのです。
わたしの記憶が、ところどころ抜けていることを、
あなたはもうご承知だと思います。
とるにたらないことから、そうでないことまで、
ふっと忘れてしまう。
なぜ?とずっと思ってきました。
忘れてしまったことで、大切な人を傷つけたことが何度もありました。
そのたびに自分が嫌になって。
だからもう、誰のことも好きにはならないと決めて、ここまできた。
でも、大人になって気づいたんです。
忘れているわけではないことに。
わたしの持ち物に、時々、身に覚えのないものがあるのです。
小指の爪ほどだったり、手のひらに乗るほどだったり、大きさも様々な、石。
石というより、結晶と言えばいいのでしょうか。
それを触ると、思い出すのです。
忘れていたことを。
やっぱり忘れているんじゃないかって?
ふつうはそう思いますよね。
でも、最近、祖母からの手紙で知ったんです。
私には、・・・記憶を結晶にする力があるんだそうです。
祖母もそうだったと、手紙には書いてありました。
一緒に届いたきれいな箱には、ほんのり水色の結晶がたくさん入っていました。
わたしには祖母の想いは見えませんでしたけど、少しだけ、あたたかかった。
・・・皮肉ですよね。
少しでも大切だと思ったら、知らずに結晶化させてしまう力なんて。
大切だと思えば思うほど、忘れてしまうなんて。
でも結晶化することさえ忘れなければ、いつでもその想いは、手の中にある。

 『だから、かなしまないでほしい。
  この力のおかげで、
  わたしはおじいちゃんをずっと覚えていられるのよ』

祖母は、一粒だけ、とてもきれいな石をペンダントに身に着けていました。
きっとあれは、祖父への想いが込められた結晶だったのでしょう。
祖父のことを話すときは、必ず大切そうに握りしめていましたから。
最愛の人のことを、どんなになっても覚えていられる力。

「この石があれば、わたしはずっと、あなたを覚えていられる」

そう思ったら、少しだけ、
1人でいることを決めたあの頃の自分を、許せる気がしたんです。

END
2023年11月4日



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