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ジャック・アタリ氏推薦『田坂広志 人類の未来を語る』より「はじめに」と目次を公開!

『運気を磨く』が15万部突破、『死は存在しない』が17万部突破と絶好調の田坂広志さんによる未来論が刊行されました。パンデミック、AI、遺伝子工学、資本主義、民主主義、宗教、科学、アート、そして「不死」の未来を、縦横に語ります。ビジネスに学業に人生に、必ず役立つ一冊となるでしょう。本記事では本書から「はじめに」と目次を公開します。

土井英司さん の「ビジネスブックマラソン」でご紹介いただきました! 

『TOPPOINT(トップポイント)』でも取り上げていただきました!

はじめに 本書の生い立ちと読み方

ジャック・アタリ博士からのメール

『田坂広志 人類の未来を語る』

この著書が生まれたきっかけは、
一通のメールであった。

2021年の4月9日、
フランスのミッテラン大統領の国家顧問や、
欧州復興開発銀行の初代総裁を務め、
現在、「欧州最高の知性」と呼ばれる思想家でもある、
ジャック・アタリ博士から、メールを頂いた。
 
アタリ博士からのメッセージは、光栄にも、
小生の英語著書、『The Five Laws to Foresee the Future』を読んで、
非常に感銘を受けたので、もっと詳しく話が聴きたい、
というものであった。

この英語著書は、小生の日本語著書、
『未来を予見する「五つの法則」』の英語版であり、
この著書は、人類史上、最大の思想家の一人と言われる
18世紀のドイツの観念論哲学者、ゲオルク・ヘーゲルの思想、

「弁証法」(Dialectic)

によって、人類の未来を読み解いたものである。

本書で述べた、この「ヘーゲルの弁証法」の「五つの法則」とは、

第一の法則 「螺旋(らせん)的プロセス」による発展の法則
第二の法則 「否定の否定」による発展の法則
第三の法則 「量から質への転化」による発展の法則
第四の法則 「対立物の相互浸透」による発展の法則
第五の法則 「矛盾の止揚(しよう)」による発展の法則

という諸法則であるが、
これらの法則を用いるならば、見事なほど、
様々な物事の未来を予見することができることから、
筆者は、これまで上梓した様々な著書において、
これら「五つの法則」を用いて、未来を予見してきた。

アタリ博士は、筆者が用いる、この「弁証法による未来予見」の方法に、
感銘と興味を覚え、メールを送って来られたのであるが、
筆者は、このアタリ博士からの要請に応え、
2021年5月から2022年4月にかけて、
毎月、一つのテーマを取り上げ、その問題の未来について、
「メールによる英語での連続レクチャー」を行った。

そのテーマとしては、

第一 ヘーゲルの弁証法
第二 SFの想像力
第三 複雑系社会
第四 パンデミック時代
第五 人工知能革命
第六 遺伝子工学
第七 経済の未来
第八 資本主義の未来
第九 民主主義の未来
第十 宗教の未来
第十一 アートの未来
第十二 不死の可能性

という「十二のテーマ」を取り上げたが、いずれも、
「人類の未来」についての重要なテーマであり、
このレクチャーでは、忌憚なく、小生の洞察と予見を語った。
 
そこで、筆者は、この「十二のレクチャー」が終わった段階で、
このレクチャーで述べた「人類の未来についての十二の洞察」を、
一冊の本としてまとめ、上梓することに決めた。
そして、その際、アタリ博士に感銘と興味を覚えて頂いた小生の著書、
『未来を予見する「五つの法則」』についても、加筆と修正を加え、
この著書に含めることとした。

米国とスペインでの講演

そこで、この『未来を予見する「五つの法則」』という著書が
生まれてきた背景についても、述べておこう。

筆者は、2007年、
米国ニューヨークの大学、New School Universityで

「弁証法的思考で予見する未来」

というテーマでの基調講演を行い、

「いかにして未来を予見するか」
「その方法で未来を予見すると、何が分かるのか」

について話をした。
その講演に対して、幸い、多くの聴衆から、
「この内容を英語で出版して欲しい」との言葉を頂いた。

次いで、翌2008年、
欧州の様々な分野のイノベーターが集まるイベント、
iFestが、スペインのバルセロナで開催されたが、
筆者は、このイベントでも基調講演を行い、やはり
「弁証法的思考で予見する未来」について話をした。
この講演に対しても、有り難いことに、多くの聴衆と
主催者のアルフォンス・コーネラ博士から
英語での出版を希望する声を頂いた。

そこで、筆者は、この講演の内容に大幅に加筆し、
同2008年、

日本語版 『未来を予見する「五つの法則」』
英語版 “The Five Laws to Foresee the Future”

として、日米同時出版を行った。

読者に勧める本書の読み方

このように、本書『田坂広志 人類の未来を語る』は、
以上の二つの背景から生まれてきた二つの論考をまとめ、
さらに、一つの重要な論考を加えて、一冊の本にしたものであり、
次の「三つのパート」から構成されている。

第一部  未来を予見する「十二の洞察」
第二部  未来を予見する「五つの法則」
第三部  人類が直面する「五つの危機」

従って、
「どうすれば、未来を予見できるのか」
という「未来予見の方法」に興味を持たれる読者は、
最初に、本書の「第二部 五つの法則」を読まれることを勧めたい。

また、
「その方法によって、未来を予見すると、何が分かるのか」
という「未来ビジョン」に興味を持たれる読者は、
最初に、本書の「第一部 十二の洞察」を読まれることを勧めたい。

そして、特に、近年の世界の情勢について、

なぜ、世界では、民主主義が後退し、専制主義が広がっているのか。
なぜ、世界では、資本主義が、貧富の差を広げ続けているのか。
なぜ、世界では、紛争や戦争が多発し、核戦争の危機が生じているのか。
なぜ、世界では、グローバル経済から一国自立経済への回帰が起こるのか。
なぜ、世界では、科学合理主義から宗教神秘主義への回帰が起こるのか。

といった疑問を持たれている読者は、
「第三部 五つの危機」をお読み頂ければと思う。
この「第三部」は、短い論考ながら、
これらの「歴史の逆行」と見える現象を、
弁証法の視点から見るならば、
どのように受け止め、どのように処していくべきか、
筆者の考えを述べている。

現代は、数多くの「解決策の見えない諸問題」に直面する時代であり、
文字通り「混迷の時代」と呼ぶべき時代である。
こうした時代において、多くの人々は、

「人類の未来は、これから、どうなっていくのか」
「その未来に、どう処すれば良いのか」

という問いを心に抱いている。

本書が、そうした人々の問いに、
答えを示唆するものであるならば、
筆者の願いは、達せられている。

本書は、近い時期に、英語版の出版も予定しているが、
本書が、日本発の「未来予見の技法」と「未来ビジョン」として、
世界の多くの人々に読まれることを願っている。

2023年2月17日
田坂広志

目  次

人類の未来を予見する、驚異的な一冊
ジャック・アタリ 

はじめに 本書の生い立ちと読み方 

第一部 未来を予見する「十二の洞察」

第一話 未来を予見する方法は、何か  
    弁証法による「大局観」

第二話 パラダイム技術は、人類の未来をどう変えるのか
    SF小説による「想像力」

第三話 「高度な複雑系社会」に、どう処するか  
    「意志」を持った社会システム 

第四話 このパンデミック後の世界は、どこに向かうのか
    人類の「利他主義テスト」

第五話 「人工知能革命」は、何をもたらすのか 
    「ベーシック・インカム」という幻想

第六話 「遺伝子工学」は、何をもたらすのか  
    「生物学的階級社会」の悪夢

第七話 「経済」の未来は、どこに向かうのか  
    「利他の経済」の復活

第八話 「資本主義」の未来は、どこに向かうのか 
    「目に見えない資本」の経済学

第九話 「民主主義」の未来は、どこに向かうのか 
    真の「参加型民主主義」 

第十話 「宗教」の未来は、どこに向かうのか 
    「宗教」と「科学」の融合 

第十一話 「アート」の未来は、どこに向かうのか 
     「アート」としての人生 

第十二話 未来において、「不死」は実現するのか 
     「不死」という名の究極の不幸

第二部 未来を予見する「五つの法則」

序 話 未来を予見する鍵は「弁証法的思考」にある
    弁証法の「五つの法則」

第一話 世界は、あたかも螺旋階段を登るように、発展する
    第一の法則 「螺旋的プロセス」による発展の法則

第二話 現在の「動き」は必ず、将来、「反転」する 
    第二の法則 「否定の否定」による発展の法則

第三話 「量」が、一定の水準を超えると「質」が、劇的に変化する
    第三の法則 「量から質への転化」による発展の法則

第四話 対立し、競っているもの同士は互いに、似てくる 
    第四の法則 「対立物の相互浸透」による発展の法則

第五話 「矛盾」とは世界の発展の原動力である
    第五の法則 「矛盾の止揚」による発展の法則

第六話 弁証法的思考で予見する未来 
    これから起こる「十二のパラダイム転換」

第三部 人類が直面する「五つの危機」

謝 辞

さらに学びを深めたい読者のために