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【ショートコンテ】ブルーグラス

作:趣移

記憶喪失になった自分
荒れた家を抜け出し、ふらりと海を眺めに行く
海の奥底に何故か惹かれる
手を伸ばしていたら、バランスを崩して落ちる
記憶を失った瞳は空虚で、ただ水面が映るだけ
奇跡的に助けられ、病院で目を覚ます
季節がめぐり退院の日がきた
以前住んでいたアパートまで帰ってくる
ドアをあけると、部屋に新しい風が吹き込む
散乱した部屋はずっとそのままだった
窓の下できらめくなにかを見つける
割れたグラスが、あの日見た海と重なる
空っぽだった脳だけど、あの日見た海の記憶からは、
ちゃんと存在していることに気づく
全てを失ったわけではなく、
記憶はこれからも重ねていけることを実感する
記憶を忘れてしまわないように、
あの日見た海のようなガラスを金継ぎして、
目に見える位置に置く。そして新しい人生を始める


大丈夫、忘れてない。


いや、絶対に忘れない。この記憶を繋ぎとめて、また、そこから新しく重ねよう。
イメージは無声映画です。


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