こーだい@まつ毛のお仕事

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ライバー/配信者/YouTuber /まつ毛のお仕事/めんずあいりすと/サロン店長 Twitter @kodai_1003

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ぼくとしんたろう。

夢を見る。 それも毎日。 夢では、僕は僕ではなく、「しんちゃん」と呼ばれる男の人になっている。 どうやらしんちゃんは、しんたろうという名前の高校生のようだ。 毎日同じ夢を見るというわけではなく、 ある日は、なんてことない、しんたろうが家族と過ごすだけの夢。 ある日は、なんてことない、しんたろうが友人達と過ごすだけの夢。 ある日は、なんてことない、しんたろうが恋人と一緒に学校から帰るだけの夢。 しんたろうは多くの人に愛され、しんちゃんという愛称で呼ばれ、「僕」と

    • ぼくとしんたろう。⑥

      暑苦しく、ベトベトとした不快さで目を覚ました。 まとわりつく汗。 着ていた灰色のTシャツは、プールにでも落っこちたのかと言わんばかりに濡れている。 かなり寝汗をかいていたようだ。 起き上がり、すぐにTシャツを脱ぐ。 暑さと汗の気持ち悪さで気付かなかったけれど、そうか、ここは“ぼく”の部屋か。 “ぼく”らしく、本棚は綺麗に整頓されている。 若い巻数が左から順に並び、本の大きさまでもが左から右へ大きくなっていく。 俺の部屋じゃないみたいだ。 “ぼく”の母は、とて

      • ぼくとしんたろう。⑤

        あなたは赤ん坊の頃ずっと、名前で呼んでも全然振り向いてくれなくてね。 耳が聞こえづらいのかもって心配になったわよ。 お医者さんに診てもらってね、健康ですよって言われたの。 でもすぐに、ちゃんと振り向いてくれるようになったんだけどね。 自分の名前を覚えるのに時間がかかったのかしら、なんて思ったわ。 それから、幼稚園の頃だったかしら。 あなたの名前を呼ぶと、たまにね、しんちゃんって呼んで、なんて言うのよ。 私もお父さんもびっくりよ。 小学校に通い始めてからは、それ

        • ぼくとしんたろう。④

          また難しい顔をしてる、しんちゃんのせいじゃないんだから、元気を出して。 二人で信号が青になるのを待っていると、隣に並ぶ“かおり”はそう言う。 気にするな、と言われても気にしてしまうのだから、それこそしょうがないじゃないか。 もし俺が、もっとはやく気付けていたならば。 母は、俺といて幸せだったのだろうか。 そばにいても、見えないものがある。 それを初めて知った。 気付けても、もう遅い。 明日から夏休み。 彼女と並んで帰るこの時間が、好きだ。 中学二年から付き

        • 固定された記事

        ぼくとしんたろう。

          ぼくとしんたろう。③

          朝、目が覚める。 やはりと言うべきか、何も覚えていない。 夢を見ないで目覚めたのは、おそらく初めてだ。 ただ、起きてなお、涙がこぼれている。 夢を見たものの、覚えていないだけ。 この涙は、そういうことなのかもしれない。 ガタガタガタと、風で窓が激しく揺れ、今にも割れて粉々になってしまいそうだ。 ここから出してくれと、僕に訴えかけているような、そんな叫びにも聞こえる。 台風がかなり近付いているようだ。 これなら、小学校も休校だろう。 連絡網でそのような連絡が

          ぼくとしんたろう。③

          ぼくとしんたろう。②

          帰りのホームルームも終わり、下校の時刻になった。 僕の通う楠木小学校は、楠木町唯一の小学校のため、しんたろうの地元が楠木町ならば通っていたことだろう。 ということは、交通事故で亡くなった卒業生がいるということくらいは大人から聞けるかもしれない。 一つだけ問題があるとしたら、 片っ端から大人に聞いて回るのもいいけれど、不審に思われて親に報告されてもそれはそれで困るということ。 運のいいことに、僕のクラスの担任である田中先生はとても仕事に熱心で、生徒の悩みも真摯に聞いて

          ぼくとしんたろう。②