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ノベル大賞(オレンジ文庫)の魅力と傾向とオススメ受賞作5選+α(2021年時点)

集英社オレンジ文庫のライト文芸レーベルの文学賞、ノベル大賞。オレンジ文庫の姉、コバルト文庫時代からリニューアル等をし続けながら行われている歴史ある文学賞です。プロ可ですし応募したいという方も多い賞だと思います。そんな方に向け私が抱いてるノベル大賞の魅力や傾向とかを語らせて頂こうと。


ノベル大賞の魅力

ノベル大賞には素敵な魅力がたくさんあります。簡単に言うと、一次選考通過率と生存率と賞金額が高く、希望者全員に評価シートが出され、カテエラになりにくいです。以下詳しく話していきます。

まず一次選考通過率がとにかく高く、4割近い応募作が選考を通過します。その後も二次三次四次最終…とありますので、一次選考通過率の高さなんて意味がないかもしれません。ですが確実に自信に繋がる数値です。

また受賞者の生存率(数年以内に小説を出せている。Webコバルト、eコバルト文庫も含みます)も高いです。まあオレンジ文庫はまだ6才なのですが、それにしても高いです。8割は生き残ってると思います。書く気力さえあれば遅筆でも(数年に一冊ペースとかでも)書き続けられている印象があり、実際ネットニュースに載ったオレンジ文庫の編集長のインタビューではノベル大賞出身者の育成に力を入れていると語っていました。男性向けラノベ~ライト文芸界ではよくある改名が滅多に行われていない(多分)のもあると思います。

賞金の高さもさすが集英社です。大賞には正賞と300万円、準大賞作には正賞と副賞100万円、佳作入選作には正賞と副賞50万円です。

また希望者全員に評価シートが出されます。文学賞で評価シート全員配布は珍しいです。他の賞で評価シートを貰える自信はないけど評価シートが欲しい…って人は送る価値があります。

色々なジャンルを受賞させている事も、女性向けではありますが、男性の受賞者もいる事も魅力です。コバルト文庫時代同じジャンルを出し続け失敗した過去があるので、とにかく面白さ第一のところがあります。とはいえ流石に少しはカテエラっぽいのがあるようで、なろう系は早々に落とされてる雰囲気がありますし、最終選考に残った定年間際の中年主人公の半沢直樹っぽいのは、「オレンジ文庫読者に読まれたいのかな?」と落とされてしまったようです(他の理由もあるかもですが…これは後に拾い上げされてますし)

短編賞ではこれ経の著者青木祐子さんがゲスト選考員に新しくなったのですが、青木さんはそこでハッキリと「そしてこの賞はとても緩いです。エンタテインメント小説で、読者は女性が中心、軽い読み口のもの、というような制限はありますが、もともとコバルト文庫は少女に支持されるものでありさえすればジャンルは不問だったのです」と言っています。短編賞での話ではありますが、このスタンスはノベル大賞にも引き継がれていると思います。

傾向

オレンジ文庫では前述の通りカテエラは殆どありません(多分)女主人公も男主人公も成年も学生も社会人もミステリーもヴィクトリア朝や江戸時代が舞台の小説も受賞しています。敢えて傾向を言うなら普段オレンジ文庫から出されていないタイプでありながらオレンジ文庫に寄せた小説です。こう書くと難しいですね。逆にオレンジ文庫やライト文芸界で人気の「お仕事小説」「後宮小説」「あやかし物」は物凄く質が高くないと受賞出来てない気がします。書くのが大好きで、小説にも愛が溢れてるような物の受賞も多い気がします。それがあればある程度の欠点は目を瞑ってくれていますが…難しいですね!

オススメ受賞作5選

①Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 ゆきた志旗

物心ついた頃から、わたしはブスだった。
物心ついた頃から“ブス”だったわたし。子供の頃に見た結婚式に憧れて、自分は無理でもせめてそれを演出する人になろうと、ウェディングプランナーになった。様々なお客様が人生の門出を祝おうとホテルを訪れる。そんなわたしが、やり手で絶世の美男子の久世課長に求婚された!?「香澄さん、ずっと探していました。あなたのような…絶世のブスを」「はぁ!?(怒)」

2016年大賞、ノベル大賞がリニューアルされた年の受賞作です。実写映画にもなった小説です。選評を見る限り質の高さとブス主人公が受けたようで、ノベル大賞では珍しくシリーズにもなっています。

②僕は君を殺せない 長谷川夕

たとえばドラマや映画などで、高いところから吊るされた、首吊り死体を見るときがあるでしょう。
ミステリーツアーに参加し、連続猟奇殺人を目の当たりにした『おれ』。周囲で葬式が相次いでいる『僕』。――一見接点のないように見える二人の少年の独白は、ある時思いがけない点で結びつく……! 誰も想像しない驚愕のラストへ! 二度読み必至の新感覚ミステリー!

2015年、コバルト文庫から派生しつつあったオレンジ文庫がきちんと創設された年の準大賞です。亡霊、という題名でもともと応募された、ノベル大賞の中で(多分)一番売れた小説です。表紙の雰囲気が良いですね。オレンジ文庫はこういうのも採っています。

③うばたまの 墨色江戸画帖 佐倉ユミ

この町で自分の名を知る者はどれくらいいるのだろう。
青井東仙(あおいとうせん)は十一歳のとき貧しさから逃れるように家を出て、江戸で偶然出会った絵師・松山翠月(まつやますいげつ)に才能を見出され、弟子となった。しかし、夜具も食事も着物も与えられ満たされた暮らしに次第に創作意欲をなくして破門されてしまう――。才能に溺れ、落ちぶれた絵師が再起をかける、大江戸人情譚! 闇と現が隣り合わせの江戸で、東仙は再び夢を描く…。2018年ノベル大賞 大賞受賞の新・時代小説!

2018年大賞。「応挙の虎、古井戸の月」という題名で応募されました。この方は三回ノベル大賞の最終選考に残りようやく受賞された方です。諦めない姿勢が素晴らしいですし、時代小説でも受賞させてくれるオレンジ文庫の懐の広さを感じます。

④愛を綴る 森りん

「フェイス、あなたはお母さんのようになっては駄目よ」
伯母は、フェイスを抱きしめながらそう囁いた。
孤独と貧困に負けることなく、けなげに生きてきた少女フェイス。17歳になりファーナム侯爵家のメイドとして働き始めるが、森で迷い途方に暮れていたところを、不思議な青年ルークに助けられる。字を読むことも書くこともできなかったフェイスは、ルークに文字の手ほどきを受けながら、知らず知らずに愛に目覚めていく……身分違いゆえに禁じられた純愛の行方は…⁉︎ 2019年ノベル大賞 佳作受賞作。

2019年佳作。実はオレンジ文庫では(意外にも)珍しいメインテーマが恋愛のコテコテの恋愛小説です。そして数少ないヴィクトリア朝が舞台の小説で、ノベル大賞で私が一番好きな小説です。

流転の貴妃 或いは塞外の女王 喜咲冬子

――絵師に賄賂を贈らなかったせいで、醜く描かれてしまったそうだ。
後宮の貴妃だった紅玉は、北方の騎馬民族の盟主へと嫁がされることとなった。 “狄”と呼ばれ蔑まれる異民族の新王への贈りものとして。しかし紅玉を待ち受けていたのは、嫁ぎ先の氏族と敵対する者たちによる襲撃だった。戦利品として囚われた紅玉は、年下のアマルという少年の妻となるように言われ? 不遇のなかから、才覚と勇気ですべてを摑み取る中華風浪漫譚! 2019年ノベル大賞 佳作受賞作。

2019年佳作。この方はもともと別レーベルで本を出していたプロです。文学賞が増えてきた昨今、こういう経歴の方がまた文学賞に応募する事も多いと思いますのでおすすめさせて頂きます。

拾い上げはあるの?

拾い上げとは編集者が「受賞はさせられないけど出版したい」と思った投稿作に声をかけるものです。結論から言うとオレンジ文庫にも二例あります。プロは多分もうちょっと水面下であると思います。

2020年度の最終選考からです。中華もので、明代ながら架空の武芸で競うスポ根系(?)小説です。

こちらも2020年度の最終選考から。上でも少し触れた中年主人公の半沢直樹っぽいやつです。


以上です。魅力がいっぱいのノベル大賞。原稿用紙換算100~400枚から応募出来るので挑戦しやすくもあります。気になったらぜひ挑戦してみてください。

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