僕が世界の敵になった理由(わけ)。

10.

「でも、ユーリ。深追いは駄目だ。まず、母上の無事を確かめる。その後は、父上にこのことを知らせるために、脱出を最優先にするんだ」
「…………解った」
 耳をすませる。
 話し声や足音は、少し頭上と遠方から聞こえて来るようだ。主戦力は二階を捜索しているらしい。
 見張りを立てているにしろ、個人宅の襲撃だ。部隊員の総数は外周に十、踏み込みに五、と言ったところだろう。戦力を分けて索敵するなら、一

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

9.

 ガタガタと何かが頽れた音、ついで複数の人間が近づいて来る気配。硝煙と真新しい血のーー匂い。勿論、父ではない。
ーーやっぱり……やっぱり、僕たちが見つかったのがバレたんだ……!!
 目撃した老婦人を消し去っただけでは飽き足らず、もうこちらの存在そのものを抹殺してしまおうと言うつもりか。それとも自由を許さず、本部で飼い慣らすつもりであるのか。
 だとしたら、母は選択を間違えている。
 二人を

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

8.

「父上、遅いねー」
 昼前に出て行ったオルゲルトは、日が暮れ夕飯が終わっても一向に戻って来る気配はなかった。起きて待っている、と駄々を捏ねはしたものの、風呂もすませパジャマに着替えてしまうと、さすがに瞼が重い。
 ラスカーの心配は募る一方だったが、正直なところ睡魔の誘惑に抗うのは限界だった。
「もう寝た方がいいわ。明日の朝、起きられないわよ。いつも通りに訓練があるでしょう?」
「えぇー、で

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

7.

「それでは、次のニュースです」
 オルゲルトが出勤するまでつけられている報道番組は、堅苦しくて面白くなくていつも気にかけたことはない。本当は子供向けのアニメチャンネルだとか、エンタメ系のバラエティーが観たいのに、と口を尖らせるユーリの意見に、ラスカーも概ね賛成である。
 けれど、ニュースはこれが一番早くて正確なのだと言う父親は、直接触れられないからこそ世の中の流れを知らなければならない、と

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6.

 ぽぅ、と淡く蒼色に光った雪が、風もないのにひとりでに集まり形を作って行く。それは次第に大きくなり、ゆっくりと手足のようなものが生え、やがて仔犬のような生物になった。
「うわぁ……ラスカー、スゴい! 仔犬だ!」
「……うー……一応狼を作ったつもりなんだけど、上手く行かないなぁ」
 無邪気に歓声を上げる弟に苦笑して、ラスカーは一気に〈魔法術〉を練り上げる。
 こうして対象物を思った形に組み上

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5.

「「セルゲイおじさん、しょーしんおめでとう!!」」
 玄関の扉を潜るなり浴びせられた複数の炸裂音に、セルゲイは普段の習性から、咄嗟に身体を丸めて致命傷を負うまいと急所を庇った。
 が、華やかに宙を舞った色とりどりの紙吹雪やテープに、ようやく彼は何事かを理解したらしい。虚を突かれたような驚き顔を綻ばせ、照れ臭そうに後ろ頭をかく。
「はは、ありがとう二人共。撃たれたのかと思って、ビックリしちま

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

4.

 家に着くと、途端にボルシチのいい匂いが鼻先を擽った。食欲をそそられ、無意識の内にふんふんと鼻が動く。母アリョーナの得意料理であるそれは、双子もオルゲルトも大好物であった。
「ただいま、母上!」
「今日ごちそう!?」
 バタバタと足音高くリビングに飛び込むと、まだキッチンに立っていた母は笑顔で二人を出迎えた。
「お帰りなさい。お疲れ様、二人共外は寒かったでしょう?」
 ぎゅうっと抱き締めら

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キャラクター交換会をやったよ&私のキャラクターの作り方

先輩作家さんの妹尾ゆふ子さん、佐々木禎子さんのお二人と、「オリジナルキャラクターを交換して小説を書こう!」という試みを始めます!

 発端は発案者の妹尾ゆふ子さんの記事を見て頂くのが一番かな、と。

 私は企画をいただいて、「楽しそう! やるやる~~!!」と叫んだだけの立場なのですが、出来上がった小説はnoteの有料記事にしようと思います。そういうことでもないとね、なかなか有料に出来る小説を書かな

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今日は茶色。暖かい飲み物を少しだけ丁寧に入れると吉。
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お礼企画まとめました。part5

お礼企画㉑
田宮Uさん
@tmyn6120

田宮さんも本文が完成して間もないころに「耳元の鈴を鳴らさない!」を読んでいただいた方です。
カクヨムに連載されている短編集がかなり個性的で、独特な表現の数々に心惹かれました。

田宮さん
ありがとうございました!

お礼企画㉓
藤代雪子さん
@fujisiroyuki

藤代さんにも本文のご指摘をいただきました。
独自の感性がそのまま小説に反映され

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僕が世界の敵になった理由(わけ)。

3.

「えへへー」
「偉い?」
「偉いさ、この数値ならもう実戦でも通用するよ」
 割って入った同僚の声に、オルゲルトは少し顔をしかめて背後を振り向いた。
「セルゲイ、あんまり甘やかさないでくれ。それに、俺はこの子たちに自分の力の使い方や制御方法を覚えて欲しいだけで、別に軍属して欲しい訳じゃあない。この子たちの未来は自分で選べる、そう思ってる」
「だとしても、十二分に優秀だってことさ。さすがはオル

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