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ガーシー参議院議員の参議院懲罰委員会の除名可決に思うこと

参議院懲罰委員会が全会一致でガーシー参議院議員の除名を可決

 参議院議員通常選挙当選後、国会に一度も登院しなかったガーシー参議院議員に対し、参議院懲罰委員会は除名とする懲罰決議を全会一致で可決しました。

 参院懲罰委員会は14日、政治家女子48党のガーシー(本名・東谷義和)参院議員=比例代表=を「除名」とする懲罰案を全会一致で可決した。15日の本会議で正式決定する。衆参を通じて除名処分は72年ぶり3例目で、国会欠席に基づくケースは初めて。
 ガーシー氏は昨年7月の初当選以降3国会にわたって一度も登院せず、参院が先に科した「公開議場での陳謝」の懲罰も拒否した。15日の本会議では、憲法の規定に基づき出席議員の3分の2以上の賛成で除名を議決。尾辻秀久議長が宣告し、ガーシー氏は議員の身分を失う。
 懲罰委では、ガーシー氏の代理として同党の浜田聡参院議員が弁明に臨んだ。「わが国の民主主義を破壊する手続きだ。国会議員の地位は国民の選挙権によって否定されるべきだ」と述べ、除名を不当と主張した。
 この後、自民、立憲民主、公明、国民民主、共産各党が討論を行い、「主権者たる国民と参院を愚弄(ぐろう)する行為」(自民党の牧野京夫氏)などと非難した。懲罰委の鈴木宗男委員長(維新)は散会後、記者団に「法律、規則、ルールがあって民主主義は成り立つ。国民を代表する重みをもっと考えてほしかった」と語った。
 また、参院議院運営委員会は理事会で、議員経験者が自由に国会内の通行や議事の傍聴をできるようにする「前議員記章」を、ガーシー氏には交付しないことを決めた。参院事務局によると、同記章の不交付は1994年以来29年ぶり。
 除名は国会法が定める四つの懲罰のうち最も重い処分。過去には50年に参院で、51年に衆院で1人ずつ除名となった。

JIJI.com「ガーシー氏15日参院除名 3例目、懲罰委が全会一致」

 このような動きに対し、さらに突っ込んだ意見を表明するかたもいらっしゃいます。

 では、何を改革していけばいいのか。第一に挙げられるのは、ガーシー議員を生み出したのが、今の特徴的な参議院の選挙制度にあるということだ。仮にガーシー議員が衆院選に出馬したとしても、小選挙区では泡沫候補に過ぎないだろうし、全国11ブロックに分かれている比例代表でNHK党(現政治家女子48党)が議席を獲得するのは難しいと見られる。しかし、参議院は比例代表が全国1ブロックなので、有権者の1%にはるかに満たない支持で議席を得ることも可能だということだ。
 参院選の全国比例は、現在全国で32もある1人区で死票が増えることを防ぎ、少数の意見を汲むために取り入れられている制度だ。それが一部のコアなファンを抱えた立候補者の当選を可能にしている。政治がマイノリティーの意見にも耳を傾けることは重要だ。ただ、今回のガーシー議員の除名を機に、今の全国比例の制度が国民の代表を選ぶシステムとして相応しいのか、検討すべきタイミングだと考える。政治家女子48党の立花前党首は記者会見で、「ガーシー議員が除名になっても2年後(の参院選に)立候補してもらう」と、次期参院選に再出馬させる方針を示している。

国会議員には一律に歳費をはらうべきなのか

 また、ガーシー議員の除名を巡る一連の動きの中で浮き彫りとなったのは、登院しない議員に対する対応の問題だ。今の制度は、当選しても登院しない議員が現れることを想定して作られていない。初当選からこれまで自動的に支払われた歳費は1800万円あまり。ガーシー議員は立花前党首に預ける意向を示しているが、それは問題の解決にはならない。理由なく登院しない場合は歳費の支払いを停止するなどの何らかの措置を決めない限り、再発を防止できない。
 さらに言えば、出席欠席だけにとどまらず、国会議員の査定についても考えるべきではないか。国会議員は選挙で当選さえすれば、辞職するまで何をやってもやっていなくても給料が支払われる。日本国憲法第49条に「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」と規定されている。歳費に加えて、事実上の給料と言える文書通信交通滞在費も加えれば一人の議員が受け取る税金は、年間3000万円以上になる。これは当選回数とは関係ない。
 実際、2022年6月にパパ活疑惑で自民党を離党した吉川赳衆院議員は、現在も無所属議員として歳費を貰い続けている。吉川議員の活動について、かつての同僚である自民党議員に聞いても、「本会議では見かけるけど、普段何をしているかさっぱり分からない」と口を揃える。また2021年2月に選挙違反事件で有罪判決が確定した河井案里元参院議員には、当選無効となったにも関わらず歳費など約5000万円が支払われた。
 また、次の選挙には出馬しないからと地元活動もせず意欲も失って、ほぼ議場にいるだけの存在となっている議員もいる。このような議員を放置して政治家が信頼を勝ち得るわけがない。国会に出席しない議員は当然だが、登院はしていてもいわば「ゾンビ化」した議員の歳費に差をつけるシステムの導入、もしくはせめて議員の査定を国民に明らかにする仕組みが求められるだろう。

デイリー新潮「72年ぶり”除名”処分でも『第二、第三のガーシー議員」は防げない 政治家の信頼失墜が招くさらなる悪夢」

 私は、この青山和弘さんの見解にまったく賛同ができません。議院が所属する国会議員に対して強力な人事権を行使することができるようになることは、議会の多数派が少数派を排除して恣意的に国会運営を進めることにつながりますし、参議院が衆議院とは異なる選挙形態で国会議員を選出する仕組みであるということは、二院制という異なる議院を有する日本の立法府において重要なことで、ただ選出時期だけが異なる衆議院のコピーである参議院が存在するという青山和弘さんの提案に私は全面的に反対します。
 さらに言えば、選挙により選出され国民の負託に応えることが仕事であるはずの国会議員に対して、何らかの査定を設けて歳費の額に差をつけようとする青山和弘さんの提案には眩暈がします。国会議員の仕事を判断するのは国民だけのはずですが、青山和弘さんはひょっとしたらご自分のような政治ジャーナリストが国会議員を採点して、それにより歳費の額が変わるような社会を夢想されていらっしゃるのでしょうか。

政治への信頼はいつの世でも高いわけではない

 また、青山和弘さんは、価値観が多用して国民が同じ流行歌を好むような社会でなくなったことを引き合いに出して、国民の政治家への信頼が落ちているなどおっしゃっていますが、そもそも国民の政治家への信頼はこの程度のものなのではないでしょうか。戦後の吉田茂と鳩山一郎の政争から現代に至るまで国民は政治家に期待する面があるものの、国民を置いてきぼりにする政争に呆れていると思いますし、戦後から現代に至るまで政治家への信頼について世論調査し続けていたならば、それほど大きな変動がないのではないかと私は考えます。