さくらのき <短編>
村の小さな小学校に、春がやってきました。
「こんにちは。はじめまして」
校庭の脇に佇む桜が、小さな子供たちに話しかけました。
「こんにちは。おじさんはだあれ?」
「おじさんは何十年もこの学校に居る桜の木さ。君たちのような子供たちをこれまでずっと見守ってきたんだよ」
そよ風とともに、もう青い葉をつけた桜の枝先が小さく揺れます。
「そうなんだ。じゃあ今は、ぼくたちを見守ってるんだね」
「見ているだけで、何もできないがね」
揺れる桜の枝先と同じように、子供たちは、けらけらと笑いまし