「むずかしいと おもうことは れんしゅうしよう。」
面白い本を読んだのでシェアします。
本屋で娘がたまたま手にとった本だったのですが、5年程前に出版されているのと、すでにテレビなどでも取り上げられているようで、ご存知の方も多いかもしれません。
ういさんという、執筆当時小学校2年生の女の子が書いた『しょうがっこうがだいすき』(学研プラス, 2019)です。
この本は小学生の先輩であるういさんが、これから入学をする後輩たちに向けて「しょうがくせいになるまでに、やるといいこと」「しょうがくせいになったら、やるといいこと」をとても分かりやすく、ていねいに書いてくださっています。
「小1ギャップ」という言葉ももうすっかり定着し一般化しましたが、幼稚園や保育園を出て小学校に入ると、それまで体験したことのないようなむずかしい勉強、細かな規律、集団行動といった文化にショックを受け、小学校が嫌いになってしまったり、問題行動が出てしまう子どもは少なくありません。
そんな、すこしこわいイメージもある小学校、その入学準備の一環として、この本を読んでおくことで心と頭の準備になる子もいるでしょう。
私がこの本を気に入ったポイントのひとつに、どうして入学前にひらがなが書けた方が良いのか、足し算引き算ができた方が良いのかについて、「その方が楽しいから」という一貫した姿勢を持っている点があります。
分からないことがあると不安になるよね、だから「分かる」ための準備をしておくと授業が楽しいよと、主張は明快。
ただし、もちろん、当たり前のことですが、ごめんなさい、この本を読んで大変なショックを受ける大人もいるはずです。
なぜならこの本には、私たち大人も「まだできていないこと」がたくさん書いてあるからです。
でも子どもを舐めないことです。
大人にできないことでも子どもは平気でやっちゃう、そんな場面を私たちはたくさん知っているはずです。
名前も知らない初対面の子とすぐに仲良くなったり、泣きながら何度も何度も逆上がりの練習をしたり……
子どもたちは、子どもであるからこそ、私たちには真似もできないコミュニケーション能力を発揮したり、ガッツを見せたりするもので、しかもそれは本人たちにとっては何ということはない日常だったりします。
だからこの本がたとえ小学校2年生の先輩から新1年生へ向けたアドバイスであって、しかもその内容が親である自分にも身についていない高度な習慣であったとしても、膝から崩れ落ちないことです。
たとえばこんなことが書いてあります。
恐ろしいですね。恐ろしいです。
はじめて読んだ時、震え上がりましたよ。
おっしゃる通りです。
はい。
すんません。(涙目)
大人も子どもも、積極的な行動の阻害要因は予期不安です。
失敗したらどうしよう、答えられなかったらどうしよう、当てられたら恥ずかしい、上手く話せないかも。
そんな気持ちでいっぱいの状態で、どうして学校生活が楽しめるのか。
大人だって難しい仕事に取り組んでいる時、会社に行くのが嫌になるもんです。上手く答えられない話はしたくないものです。
それにもちろん、練習してもできるようにならない子も居ます。それは事実そうです。向き不向きってもんがあります。
できないのは障がいのためかもしれない、才能のためかもしれない、あるいはテクニカルな問題があるのかもしれません。
しかし、ういさんはこうも言っています。
一生懸命やることについて、体育の授業を例に挙げて、こんな風に書いています。
まずは一生懸命やること、それが大切なんですよと。
大人はすぐに「努力」や「成果」を論じたがりますが、重要なのは自分とどう向き合ったかです。
一生懸命というのは、出せる力を全部出しきるということ。
全力でやれば、実は失敗も挫折もないのです。
全力出し切ってダメだったら、それはもう仕方ないよねと思えるのが人間です。
いつまでも忘れられない失敗というのは、案外、「もっとやれた」「全力じゃなかった」という気持ちの残る取り組みのことだったりするんですよね。
それってつまり、後悔しているのは結果にではなく、自分自身に対して、なのかもしれません。
いま漫画やアニメでは「異世界転生」や「タイムリープ」系のジャンルが人気ですが、その根底にも「人生やり直せたら、今度は全力出したい」という、一生懸命になれなかった過去への悔恨が、大人たちの胸に残っているからなのかもしれませんね。
そんな私たちだからこそ、『しょうがっこうがだいすき』を読むと、今からでも頑張ってみようかなと、前向きな気持ちになれる大人も出てくるんじゃないかと思えます。
私も、娘と一緒にはじめてみます。
きっと子どもの方が習得スピードは絶対に早いし、どんどん成長していくでしょう。
でも、一生懸命やることが大切ですから。
自分を他人と比べない、自分は自分と比べる、というのは、イチローも引退会見で言っていましたが、ひとつポイントかもしれませんね。
著者のういさんはまだ小学生ですが、最後のあとがきのようなページ「ほいくえん・ようちえんのみんなへ」には唸らされました。
心臓の強い方はぜひ読んでみてください。
私は一週間寝込みました。
草々
令和6年4月6日
古賀 裕人
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