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税理士のビジネスモデルの歴史と未来を分析してみた

 前回コロナ後の税理士事務所業務で記帳代行の復権と予測しました、今回は、細部に突っ込んで税理士事務所の会計業務のビジネスモデルを分析することによりその根拠を示すことを試みました。

1・古の記帳代行の時代

 私が最近行っている記帳代行の流れはつぎの4つの要素に分解することができます。この後、この4つの要素を用いて考察してゆきます。

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 従来の人力による記帳代行はキーパンチャーが①から④まで全ての作業を行っていたことになります。

従来の人力による記帳代行の流れ

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いにしえのJDLの会計事務所の前を通りかかるとバチバチバチというまるで剣道場のような打鍵音が聞こえたといいます。

2.自計化とMAS業務への変遷

その後パソコンが普及し、自計化ムーブメントが起こります。

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 税理士事務所のキーパンチャーさんの仕事を、そのまま顧問先企業の経理社員さんが取って代わるようになりました。

 メリットは、月次処理がタイムリーに行えること。これがTKCが自計化を推進した前向きな理由だと思います。

 税理士事務所の会計ソフト入力がなくなっても、なお顧問料をもらい続けるために、顧客訪問する巡回監査業務が考え出されました。監査と言うと公認会計士の先生の反感を買うのですが、税務的に問題の無いように入力内容のチェックをすることが主です。

 しかし経理がしっかりしている顧問先だと、さすがに入力内容のチェックだけではお金をもらいづらいので、MAS業務というものが生まれます。MASとはManegement Advisory Serviceの略で経営助言サービスという大それた仕事です。MAP経営のようなMASに特化した会社も誕生しました。

 ここに所長税理士にとっての悩みの種が生まれます。所長税理士が直接巡回監査できる顧問先数はせいぜい20件程度です。従って、ほとんどの顧問先に、税理士資格がない経営者経験もないスタッフが訪問することになります。この前のnoteにも書いたように、Google等の普及により経営者と税理士事務所スタッフとの情報格差は小さくなっています。また、現在税理士事務所業界は人手不足で、海千山千の経営者と渡り合えるような人材を得て育てることは非常に困難になっています。採用コストと教育コストが高くなり、せっかく育てた社員が辞めてしまったらかけたコストがパーになります。

3.freeeとMFという黒船襲来

 記帳代行にしても自計化にしても、会社の規模によりますが月額3万円から5万円プラス決算時にその3ヶ月から6ヶ月分というのが税理士事務所の相場でした。

 そんなところに「税理士は不要」を謳い文句とするクラウド会計ソフトが参入してきました。

 ITリテラシーの高い経営者が、これに飛びつくのは当然だと思います。それまで、TKC・JDL・MJS・ICS・EPSONという藩に所属する税理士と、市販会計ソフトと達人・魔法陣を使う浪士たちが平和に共存していた、太平の業界に突如襲来した黒船でした。

 freee とMFは自計化ツールなのですが、作業の流れを先程の4つの要素で表すと下記のようになり、従来の自計化とはかなり異なったものとなります。

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 ②の部分の金融機関や他のクラウドサービスとの連携が便利で売りなのですが、ブラウザーベースであるため会計ソフトとしては、処理速度が遅く機能も貧弱なため、自計化ツールとしては中途半端です。受け取ったデータをそのまま使って税務申告まで持っていくことは困難ですので、多くの会計事務所では、一旦会計データを弥生会計などに取り込んで修正作業を行うことになります。

 freeeやMFを使う顧問先には、下手に入力するとデータがぐちゃぐちゃになり修正が難しくなるので、金融機関などからデータ連携を行ったままの状態でデータを欲しいという声も良く聞きます。

 ですので実質的には記帳代行なのですが、顧問先側で、自社で経理作業を行ってるという勘違いを誘発します。

 freeeをうまく活用している若手の税理士の話を聞くと、その勘所は「いかに顧問先に直接入力させないように業務を設計するか」ということでした。

4.人力に頼らない自計化

 freeeやMFに惹かれるひとり社長や、経理社員を雇いたくない社長にとってのベネフィットは、手間をかけずに安価に会計帳簿が作成できて税務申告ができるということです。

 一方、税理士事務所にとってのベネフィットは、人手をかけずに、短時間で月次処理や決算申告を行うということです。

 双方のベネフィットを考えると高効率の記帳代行という答えが導き出されます。現状では下記のような作業の流れが想定されます。

 インターネットで顧客とデータのやり取りをすることで、人力での記帳代行に比べると、スピーディに顧問先に月次の報告ができるはずです。

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5.さらに進化した自計化

上記4.の記帳代行の欠点は、複数のソフトウエアを使う面倒臭ささです。。

 その工程数を減らすことに成功しているのが、エクセライク会計を使った記帳代行です。

 ③の中間処理から期末修正仕訳までをひとつの会計ソフトの中で行うことができます。将来的に直接、勘定科目内訳書や事業概況書のシステムに流し込むモジュールができれば弥生会計を経由する必要もなくなります。エクセライク会計だけで完結することができます。

エクセライク

 

6.CSV至上主義

 高速の会計入力をする鍵は、CSV形式データです。とにかくどんなデータでも ”日付””金額””摘要”のCSV形式に出力さえできればExcelによって加工して、会計ソフトに流し込むことができます。

 いままで見てきた会計ソフトの手前にあるツールは、おしなべてCSVデータをつくる機能であるといえます。FreeeやMFもCSV生成ツールとして位置づけている税理士事務所は少なくありません。

 そこで税理士事務所のコア業務を整理すると以下のような流れになると思います。

税理士事務所機能

 今後、税理士事務所が生き残るひとつの途は、まず、この①から③への流れをいかに効率的に仕組み化するかにかかっているのではないかと思います。

追記:

決して、freee/MFをdisっているのではなく、自社の経理には両方つかっております。特に金融機関連携、請求書機能は優秀ですので、まさにCSV生成ツールとして活用させていただいております。







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