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面会交流と要件事実

読書ノルマがどんどん増えていく

滝本先生の気になるtweetがあって

即入手

千葉地方裁判所にいる吉川昌寛裁判官(千葉大法科大学院の非常勤講師でもある)による論文である

要件事実って何、というところが、法曹よりも関心が多い当事者にとってややハードルが高いかもしれない

とりあえず、要件事実といえば・・・

紛争解決を大岡裁きではなく、ルールの中で実現するツール?知恵?工夫?

なんで嘘だらけの相手の望む結論になるのだーといった怒りを覚えることがあるだろう当事者の疑問の答えにも通じるだろうか

正義や正しいと信じている論理が通用しないように感じられる秘密でもあるだろうか?

民事訴訟のルールを前にして、納得のいかないまま判決結果への不満だけ残し続けるケースがあることも想像する

まずは、要件事実論というものを知ってみることと、その上で、通常の民事訴訟のルールが家事紛争においてどのように機能しているのか(していないのか)、親権者を指定したり、面会交流をそこで定めるほかおよそ任意の履行が期待できないためにやむを得ず利用せざるを得ない裁判所に潜む課題に対する現実的な指摘に富んだ考察ではないだろうか(単なる、裁判所の無責任体質の批判にとどまっていないという意味で。)

裁判所で何が起きているのか、何が欠けているのか

子どもの権利が守られていないという非難を浴びる裁判所が抱える課題について具体的にアプローチしているものと思われる

結論として、面会交流事件については、要件事実的な解決がふさわしくないという発想に寄ることになるが、そもそも家裁の現場がブラックボックス化している要因がそこにあるのだと見えてくる

なぜ仲が良い親子が会えなくなっているのか

そんな非人道的な事態をまさか優秀で難関の試験を突破した法曹で構成される司法において、行われるわけがない=司法の判断は正しい=会えない(制限的にしか会えない、を含む)ということはそれなりに根拠があることだろう=会えない親に問題があるのではなからろうか=別居親・非親権者差別を招く、といった闇深い構造が根深い現場で、実は、紛争解決ルールすら固まっていなかったというのだから悲劇的である

ルールがない

連れ去りに対するルールを欠くことについて憲法違反を主張する集団訴訟があるが、面会交流を速やかに実現していくためのルールもやはりない

都合のいい裁量の中でしか実現しないから、会えなくなるのである

権利として確立しているのであれば、親子であるという確認さえあれば、速やかに会える環境が整っていくことが望ましいし、それを阻害するものに対しては抑制するための手段が講じられるべきであるという単純なことである

そもそも権利とは言えないのかもしれない、くらいあやふやで、結果、どの立場の親子が長く紛争に煩わされていくことになってしまう

どうあるべきかが今後さらに議論が盛り上がって模索されること(ひいては立法的解決=共同親権への法改正が望ましいだろう)を願うとして、親子の関わりをめぐる論点について、歴史をひも解いて詳細に分析された試み自体画期的といえよう。

最後の指摘がまた沁みる

・・・要件事実論という法律実務家の専門的なツールの名の下、法律的な知識の面において素人であることの多い当事者が、この種の事件の解決を主張立証の勝ち負けという観点で考えるようになると、当事者間の話し合いの機運が消失して主張が先鋭化し、互いの立証の不十分さを攻撃し、自己に立証責任がないことを盾に事案解明に非協力的になることにより、紛争解決までの時間が長引くことが懸念される。

現場の法曹が一番困っているのかもしれない

民事訴訟といえば要件事実だから、それにならって家事紛争もアプローチしてみるが、そこは、当事者間の話し合いの機運が大切だ、と言われれば、それはもうルールの放棄に近い

家裁を廃止して、少なくとも面会交流を実現するには、親ガイダンス、双方プラス子どものケアを含めたそれぞれの立場へのカウンセリング的支援を充実させる親子センターを創設させることが大切になってくるのではないだろうか

話合いをするために特化したセンターである

調停は不要と断言して、話合いの発想がそもそもない支援者等の混入を排斥することに努め、父母の離婚という親子の危機に直面しながらも、どうやって子の利益を守っていくかのために機能するのである

結局は、今、家裁の調停委員として活躍している方たちが、場所を変えて同じようにサポートするだけかもしれないけど、場所を変えることがとても意味がある

子どものことを思う大人は実は多い

正しく知って、正しく機能すれば、日本も子どもの権利を守っていくことは可能なはずだ

父母に共同養育されること、それが子どもの権利である


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