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「授業の方法」6本(2017年5月〜6月のnote記事より)

noteマガジン「ちはるのファーストコンタクト」を定期購読いただき、ありがとうございます。定期購読を開始してもその月より前の記事は読めませんので、定期購読者向けにときどき過去の記事をまとめて読めるようにしています。

今回は、2017年5月〜6月のnote記事から、「授業方法」6本をまとめてお届けします。

01 授業の最後の15分で400字のショートレポートを書いてもらう。
02 大学授業の私語は指定席システムで解決しよう。
03 KP法(紙芝居プレゼンテーション)を授業のワークで使う。
04 授業の「強度×時間×頻度」について考える。
05 相互評価は「評価は教員がするもの」という常識を壊す。【前半】
06 相互評価は、良い評価者を増やし、コミュニティ全体のレベルを上げる。【後半】

01 授業の最後の15分で400字のショートレポートを書いてもらう。

今回は授業設計の話題を取り上げます。具体的には「授業時間内に書くショートレポート」です。

現在進行している今期の授業は、インストラクショナルデザインの実践編という位置づけの科目です。約200人の受講生が4人でチームを作って授業の設計を進めていくという形式です。

私の解説と説明以外の授業時間の大部分はグループワークにあてられます。とはいえ、途切れなくグループワークをするわけではなく、15分を目処にしてなんらかのブレイクを入れます。サイコロを振ってグループを指名して、その途中経過を書画カメラに映しながら、説明してもらったりします。1つの作業が15分を超えないようにコントロールすることが大切です。飽きたり、ダレたりするからです。

そんなふうにしてグループワーク中心に進んでいくわけですが、授業の最後には15分くらいの時間を取って400字のショートレポートを書いてもらっています。このやり方は、宇田光先生の「当日レポート方式(Brief Report of the Day, BRD)」にヒントを得たものです。BRD方式については宇田先生の『大学講義の改革―BRD方式の提案』(北大路書房, 2005)に詳しいです。

レポートでは、「今回のグループワークをしてみて面白かったこと、難しかったことを400字以内で書いてください」という指示を出します。このレポート作成の仕事を家に持ち帰らないところがミソです。授業の最後にレポートを書くことによって、今回の作業を振り返り、その意味づけを自分でするわけです。

ショートレポートはほぼ毎回書いてもらいます。レポートを書くという仕事が最後にあるということを知っていることで、グループワークに良い影響が出てきます。グループワークに真剣に関わらなければ文章が書けないからです。

受講生はMacBook必携ですので、みんなパソコンを広げて、カチャカチャと文章を打ちます。この時間帯だけは、静かな教室になり、タイピングの音だけがするという、不思議な時間となります。

余談ですが、もし大学入試に文章を書かせるというテストを導入するとしたら、こんな光景になるのかな、と想像したりします。もちろん、その時書かせる文章の量は、100字とか200字ではまったく意味がありません。少なくとも数千字の文章を数時間かけて書かせなければ、意味がないと思いますね。

02 大学授業の私語は指定席システムで解決しよう。

今回は「授業中の私語と指定席」の話題を取り上げます。

先日、私を含めて3人の先生が話題提供をしたあと議論をするというシンポジウム形式の授業をしました。受講生は大学2年生が200人弱でした。

この授業は、各先生が自分の研究についてとびきりの面白い話を提供してくれるので、私自身も楽しみにしている1コマです。受講生の多くも興味を持って聞いてくれました。ですが、必ずいるのですね、声高に私語をするグループが。

私はそのとき一番前の席に座っていました。1列あけたその隣で私語をするグループがいました。彼らが一番後ろに座っていれば私も無視できたでしょうが、すぐそばでしたので、彼らに近寄って、身振りで「うるさいよ。静かにして」と示して戻りました。しかし、しばらくしてまた私語を始めたので、今度は小声で「話をするなら出ていきなさい」と言いました。結局、彼らは出ていかずにそのまま受講しました。

なんかこれはデジャヴだなあ、と思っていたら、一年前の同じ授業でも同様のことがあったのです。自分のブログにこう書いていました。

話題提供は、古山先生、畠山先生、そして私と、それぞれがとびきりの話をしていますので、絶対に面白いはずです。それでも、私語やザワザワした感じがあるのですね。畠山先生は、声高におしゃべりしている学生をきっぱりと注意しました。それでもダメですね。すぐにザワザワ感が戻ってしまう。隣に友達がいれば、おしゃべりしてしまうのでしょう。でも私語がある教室は本当にやりにくいし、疲れます。

そしてその解決策も書いてありました。

この感覚は久しぶりに味わいました。私の授業では私語がないのです。ああ、そうか私の授業では、座席指定で座ってもらうので、友達がいたとしても離れ離れです。それで私語がないんだ。だとすれば、こういうレクチャー型の授業でも、座席指定をすればいいんだ。大雑把でいいので、ア行の人はこのエリア、カ行の人はここ、サ行の人はあそこ、という具合に指定する。そうすれば、仲のいい友達が隣同士になることはない。誕生月で分けてもいいです。

そう、座席指定をして、仲良しグループをバラバラにすればいいのです。授業などおかまいなしにおしゃべりをするのは、たいていは例外的な一人です。その隣に座っている仲良しは、それに付き合ってしまい、その結果としておしゃべりが拡大するのです。であれば、バラバラにすればいい。さすがに文脈関係なしにおしゃべりをする人も、一人ではしないでしょうから。

小学校から高校まで、教室では自分の席が決まっています。大学から自由席になります。自由席には良い点もあります。たいてい一番前の席は空いていますので、そこに陣取れば机を広々と使えます(私は今でも学会などではそうしています)。しかし、仲良しグループで固まると私語を自動的に誘発するという欠点が大きいのです。それを解決するには、指定席システムが有効です。

03 KP法(紙芝居プレゼンテーション)を授業のワークで使う。

今回は、KP法(紙芝居プレゼンテーション)を授業のワークで使ってみたことを報告します。

KP法とは川嶋直氏が考案したプレゼンテーションの方法です。A4判のコピー用紙を横長に使い、そこに大きくメッセージやキーワードを書き、話をしながら順次ホワイトボードに貼り出していくという方法です。標準的には次のようなものです。

・KPシート10〜15枚で1つのテーマ(KPセット)を構成する
・KPセットはひとつで2〜5分で話し終える分量
・5人から30人くらいの場面で有効

詳しくは、川嶋直『KP法 シンプルに伝える紙芝居プレゼンテーション』(みくに出版, 2013)を参照ください。

さて、いま進行している授業は、インストラクショナルデザインの実践編的な位置づけで、受講生に90分の授業を企画してデザインしてもらうというものです。4人で1グループを組んで、4週間に渡って制作を進めるというプロジェクト学習です。

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