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7. “早期回想”とは何か

今回のポイント
・アドラー派のセラピストは、その人のライフスタイルを「早期回想」を手掛かりにして明らかにする
・早期回想とは、その人の思い出せるもっとも最初の頃のエピソード記憶
・そこにはバイアスのかからない形でその人のライフスタイルが投影されている

7.1 “早期回想”とは何か

前回、ライフスタイルの説明をしました。自分のライフスタイルは、それがどんなものであるかを自分自身がわかってさえいれば、それを変えていくことも可能であると言いました。では、自分のライフスタイルはどのようにして明らかにすることができるでしょうか。

アドラー派のセラピストは、その人のライフスタイルを「早期回想 (Early Recollections)」を手掛かりにして明らかにしていきます。

早期回想とは、その人の思い出せるもっとも最初の頃の記憶です。「私は自分が生まれた瞬間のことを覚えている」という人もいるかもしれません(またそういう研究もあります)。しかし、ここでいう早期回想とは、そういう類の記憶ではなく、次のような条件を持った「エピソード」です。

・特定の日時、特定の場所で起こった一回限りの出来事で、
・「始め」と「終わり」のある一連の物語で、なんらかの感情が伴っているもの

早期回想の一例としては「7歳の時、私たちがピクニックに出かけると、賞金をもらえる競走がありました。頑張ったけど、2着だった。くしゃっとなってしまった」というようなものです(これはアドラーの本の中にある例です)。

早期回想としては「一回限りの出来事」という条件が大切です。たとえば「日曜日の散歩は、いつも父親と一緒に出かけました。父と私だけだったその時間が好きでした」というような「よく◯◯したものだった」という記憶は、早期回想の材料としては情報が少ないものとなります。このような話は「エピソード」ではなく「レポート」と呼ばれます。

早期回想の材料としては「レポート」ではなく「エピソード」を出してもらうことが大切です。

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早期回想の例としてスライドのようなものがあります。これらもアドラーの本からの引用です。特定の日時に一度だけ起こった出来事であり、何らかの感情が伴っているエピソードであることがわかります。

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7.2 [ワーク] “早期回想”を3つ出してみましょう

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