3-コラム用

フェイクニュースの時代だからこその研究論文は読まれてなんぼ。

水曜日はフリーテーマで書いています。

研究論文を書くのは大変な仕事です。研究のアイデアを思いついて、文献を調べて、予備調査をして、本調査をして、データ分析をして、論文原稿を書き、査読者コメントに対応してやっと論文に掲載されるのです。もちろん採録されずに「リジェクト」という判定を受けることもあります。かかる時間は、少なくとも1年間、長い場合は数年かかります。

研究論文を世に出すのはそれほどまでに大変です。しかし、せっかく出版されたとしても、それが実際の読者の目に触れる機会はこれまではひどく限定されていました。論文誌はその学会の会員にしか届きませんでしたし、図書館が論文誌を置くことも、主に予算の関係で、徐々に少なくなってきました。20世紀では「論文を書いてもそれを読んでくれるのは世界に3人しかいない。自分と指導教授と査読者の3人だけ」という自虐的なセリフが流通していました。

しかし、21世紀のオンラインの時代になって、そうした研究論文も次々と電子化され、公開されるようになりました。科学技術振興機構(JST)が作ったJ-STAGEというサイトでは、電子化された古い論文から、最新の論文まで読むことができます。その多くは無料で読むことができるようになりました。

最新の論文が無料で公開されるのは、会費を払っている学会員へのプライオリティを考えるとどうなのか、という議論は多くの学会でされたと思われます。しかし、それにもかかわらず無料公開に踏み切った学会が多いのです。研究論文は読まれてなんぼです。苦労して書いた論文だからこそ、多くの人に読んで欲しいと思います。

現代は、フェイクニュースの時代です。マスメディアもインターネットメディアも簡単に信頼できない時代です。だからこそ、査読を経て公刊された研究論文の意味は大きいものとなります。普通の人があたりまえのようにオンライン公開されている論文を読んで、問題解決の参考にするということが珍しくない世の中になれば、社会はより良い方向に変わっていくでしょう。

マガジン「ちはるのファーストコンタクト」をお読みいただきありがとうございます。このマガジンは毎日更新(出張時除く)の月額課金(500円)マガジンです。テーマは曜日により「アドラー心理学/教えること/フリーテーマ/お勧めの本/連載記事/注目の記事/お題拝借Q&A」で書いています。ご購読いただければ嬉しいです。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。