5a-オトナの研究

【連載】アンケート調査の基礎(第5回)アンケートの基本的な構成要素

金曜日は「オトナの研究」のサブテーマとして「アンケート調査の基礎」の連載をしています。アンケート調査は、重要な研究手法のひとつだからです。

前回は、アンケート実施の時期と回数を取り上げました。アンケート実施の時期と回数については、その目的によって、(1) 1回限りのアンケートで済む場合、(2) 事前と事後の2回とる場合、(3) かなりの期間を過ぎて新奇性効果が薄れた頃に行うフォローアップ調査を行う場合があります。

今回は、アンケートの基本的な構成について説明します。

アンケートの基本的な構成要素は以下の4つです。これは紙によるアンケートでも、オンラインによるアンケートでも共通です。

(1) 表紙
(2) フェイスシート
(3) メインの質問項目
(4) 自由記述

まず表紙には、この調査の趣旨を簡潔に述べます。何についてのアンケートなのかということと、どのような目的でこのアンケートを行うかということの説明をします。この説明をあまり詳しくしすぎると、このあとの回答にバイアスがかかってしまうこともありますので、簡潔な文章で説明します。

表紙には倫理的な配慮についても説明します。倫理的配慮は以下の内容を明記し、回答者の同意を得ることで果たされます。

・任意による回答であり、回答しなくても不利益を被らないこと。
・回答を始めても、途中で離脱可能であること。
・個人情報を収集する場合は、それを適切に管理し、目的外に使用しないこと。
・無記名での回答の場合は、個人が特定されないようにデータを扱うこと。

フェイスシートでは回答者の属性を聞きます。性別、年齢などの基本的な属性の他に、調査目的からみて重要だと思われる要因についてもここで聞いておきます。たとえば学生生活の満足度を明らかにしたい調査であれば、それに影響しそうな要因である、通学時間、自宅/下宿、サークル所属とその種類などをここで聞いておきます。

メインの質問項目では、測りたい行動、認知、態度についての質問項目について聞きます。ここでは「尺度」という手法が使われます。物の長さを測りたいときはモノサシを使います。同じように、人間の行動や認知や態度についても、それに応じたモノサシを作って、使うことができます。尺度についてはこのあとの回で説明します。

最後に自由記述を書いてもらいます。自由記述といっても、何について書いてもらうかはこちらから明示します。たとえば学生生活満足度の調査であれば、「満足しているところをひとつあげて、その理由を書いてください」あるいは「不満に思っているところをひとつあげて、その理由を書いてください」というような質問です。

自由記述の質問項目はよく考えて、限定した個数だけ聞きます。自由記述の項目が多くなると、回答者は負担を感じて離脱しやすくなります。得られた自由記述の回答は、数字を選ぶだけの質問では拾いきれなかった内容をカバーすることができますので、貴重なデータになります。

最後に、回答に対しての感謝の言葉を入れます。

以上がアンケートの基本的な構成です。

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