2-教える技術19

【コーチング】04 マズローの自己実現とは全体として自分らしくなること

火曜日は「教える技術/学ぶ技術」のトピックで書いています。しばらくコーチングの話題で書いています。

前回は、コーチングとはトレーナーとカウンセラーの両側面を持って、クライエントが持っている「何者かになりたい」という希望を実現する手助けをすることだということを説明しました。その過程で、クライエントの専門領域をコーチ自身が学んでいくことに意味があります。

さて、初期のコーチングの理論的背景になったのはマズローとロジャーズといった人間性心理学の人たちでした。そして、マズローもロジャーズもアメリカの大学でアドラーから講義を受け、アドラーから大きな影響を受けたといっています。そうすると、アドラーからマズロー、ロジャーズ、そして初期のコーチングへという影響の流れが想定できます。つまりコーチングの源泉の1つとしてアドラーの存在があったということです。

マズローは欲求の5段階モデルで有名です。生理的欲求/安全の欲求/所属と愛の欲求/承認の欲求/自己実現の欲求というように欲求を登っていきます。ここでいう自己実現 (self-actualization) とは世俗的な成功や自己の欲求を満たすような「他人による定義」ではないということをマズロー自身が言っています。そうではなく、自分がなしうる最大限のことであり、自分の存在に関わることであり、全体として自分らしくなることです。

とすれば、これはアドラー心理学でいうところの自己理想 (self-ideal) に相当します。人はこの自己理想を目指して行動します。しかし、自己理想が一体どういうものなのかということは普段は意識していないのです。なぜならそれが自分にとっては当たり前のことだからです。

そうするとコーチの仕事の1つは、自己理想(アドラー)や自己実現(マズロー)が一体どういうものであるかということをクライエントとともに明らかにしていくことです。それを明らかにすることによって、自分がどの方向に進んでいるのか、進むべきなのかということを確認できるからです。

自分の進むべき方向がわからないことは不安を生みます。不安になると迷いが出て、全力で努力するのが怖くなります。もしかすると無駄になるかもしれないからです。しかし、自己理想が明らかになり、進むべき方向に迷いがなくなれば、全力で努力することができます。そういう状態なることを手助けするのがコーチの1つの仕事です。

マガジン「ちはるのファーストコンタクト」をお読みいただきありがとうございます。定期購読者が増えるたびに感謝を込めて全文公開しています。このマガジンは毎日更新(出張時除く)の月額課金(500円)マガジンです。テーマは曜日により、(月)アドラー心理学(火)教える/学ぶ(水)研究する(木)お勧めの本(金)思うこと/したいこと(土)経験と感じ(日)お題拝借で書いています。ご購読いただければ嬉しいです。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。