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【対談】「NIKE」「サガミオリジナル」…クリエイティブディレクター・中川諒が“影響を受けた広告”を語る

かくしごと代表の編集者・黄孟志が、業界を超えてさまざまなクリエイターと対談するシリーズをスタート! 記念すべき第1回は、クリエイティブディレクター/コピーライター/恥研究家として活躍する中川諒さんと「広告」について話しました。

中川諒
クリエイティブディレクター/コピーライター/恥研究家
1988年生まれ。幼少期をエジプトとドイツで過ごす。2011年に電通に入社するも希望のクリエイティブ局には配属されず、自主制作をはじめる。2017年、「カンヌライオンズ」のU30プログラム「ヤングライオンズ」の予選を150組から1位で勝ち抜き、日本代表に選ばれる。2018年、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞し、社内の転局試験に合格。営業から念願のクリエイティブ局に異動。同年カンヌライオンズのアジア大会「ヤングスパイクス」で1位を獲得。2019年、Googleにクリエイティブディレクターとして出向し、シンガポールとシドニーで勤務。2023年に12年勤めた電通を退社。著書に『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』(ダイヤモンド社)『いくつになっても恥をかける人になる』(ディスカヴァー)、連載に『赤恥研究所』(BRUTUS)がある。
Twitter/Instagram:@ryonotrio

■学生時代に好きだった広告はNIKE「Take It To The Next Level」(2008年)

 さっそくだけど、プロになる前、大学生の頃に影響受けたコピーやCMから聞かせて! 世代的にAppleのThink differentとかに影響受けてる人は多いよね。

中川 一番好きな広告映像はNIKEの「Take It To The Next Level」。いつ見てもグッとくるね。サッカーできないけど(笑)。

 よく覚えてる! まだスマホ普及したてくらいだけど、それでWEB CMがみんなの記憶に残ってるってすごいな。どこが特に好きなの?

中川 自分で自分を磨いて、次のステップに進む感じに鼓舞される。

 それはまさにこれまで中川がやってきたことだから、大学時代から知ってる身としてエモいな。電通に就職して希望とは違う局で働きながら自主制作で賞を獲ったりしてクリエイティブ局に異動して、さらに今はステップアップして多岐にわたって活躍してる。…この広告のおかげだったんだ(笑)。

中川 ちなみに監督はガイリッチー。

 たしかに映画の『スナッチ』感あるね。中川は大学生時代から誰がつくってるかとか、ちゃんと把握してたよね! 俺は大学生の頃はただの生活者として見てたから、全然知らなかった。

そういう素人視点で、俺はフリスクのCMシリーズには影響受けたな。これ見て「アイデアで勝負する仕事をしたい」って想いが強くなった記憶がある。アイデア出したくてフリスク持ち歩いてたもん。

■最も影響を受けたのはサガミオリジナル「LOVE DISTANCE」(2009年)

中川 でも、一番影響を受けたって意味ではNIKEの「NikeCosplay」とサガミオリジナルの「LOVE DISTANCE」。どちらも伊藤直樹さんの仕事。

 どっちも懐かしい。伊藤直樹さんとかPARTYとか、みんな憧れたよね。どんな影響を受けた?

中川 NIKEのはバズムービーの走り的存在。SNSもここまで普及してなくて、YouTubeもかなり早い人しか見てなかった時代。この意味不明なウェブ動画をNIKEの公式じゃないところであげてたはず。ウェブ自由やなぁと思った記憶が。

 たしかに。それはマスメディアしかなかった時代から、一気に選択肢が増える感じするね!

中川 「LOVE DISTANCE」は単発じゃないWEB動画ってのが当時は新しかった。テレビのドラマみたいに少しずつ進む仕組みで、今では当たり前な作法。その走り。

 LOVE DISTANCE、めっちゃ衝撃的だったね。

■「コピー」というより「真理」に近い言葉が好き

 最近だとどんな広告がいいと思った?

中川 …意外と全然思いつかない(笑)。

 俺は最近だと「全裸監督2」の屋外広告が印象に残ってるな〜。言葉の力が強いのと、屋外広告ならではの表現なのがツボだった。デジタル時代を象徴するネトフリをアナログな手法で広告するのも美しい。「下を見ろ、俺がいる。」は作品の主人公の言葉で「上を見ろ、星がある。」はコピーライターの言葉で、うまく混ぜてつくったというのも巧みすぎる!

中川 …こんなに思いつかない自分に驚いてる。

 そっちの領域にいるとインプット多すぎて選べないんだろうね。

中川 コピーとか広告じゃないんだけど、JOURNAL STANDARDの「STANDARD JOURNAL」って取り組みはすごく好き。毎回服のお題をデザイナーに渡して、その過程をYouTubeで公開するっていう。途中で降りちゃうデザイナーとかもいて。お店に並んだその商品を見に行ったら接客されるんだけど、先にコンテンツで過程を見てるから店員さんより俺の方が詳しい(笑)。そういう購買体験って今までなかったかもと!

 中川は実際に人がどう動くのかとか、どんな体験をするのかってところを大事にしてるもんね。

中川 あ、コピーも思いついた。ジョージアの「世界は誰かの仕事でできている。」だね。コピーというより、真理に近い。そういう言葉としての耐久性が強いコンセプトに興味があるかも。

 元電通の梅田悟司さんのコピーだね。梅田さんの著書『「言葉にできる」は武器になる』の中に書いてあった「言葉にできないのは考えてないのと同じ」って言葉に影響を受けたな。言語化から逃げられなくなった(笑)。

ちなみに「耐久性の高い言葉」は中川の最新著書『発想の回路』を読めば考えられるようになるということで大丈夫?

中川 いや、そんな簡単じゃない。でも、企画は30分で出るようになる。

 企画は簡単なんだ(笑)。忙しいなかありがとう!

構成:鎌田あゆみ(かくしごと広報担当)

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