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手綱を握った音楽の面白さとつまらなさ 秋山和慶/フィルハーモニック・ソサィエティ・東京

東京芸術劇場コンサートホールで、フィルハーモニック・ソサィエティ・東京第13回定期演奏会を聴いた。

モーツァルト交響曲第39番 変ホ長調 K.543
R. シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」 作品40

指揮:秋山 和慶
管弦楽:フィルハーモニック・ソサィエティ・東京

オーケストラ・ダスビダーニャの公演の帰りに、池袋駅構内でこの公演ポスターを見かけた。こちらもアマオケ。

おそらく小澤征爾が亡くなってから秋山和慶にとって初めてのコンサートであろうから、小澤の盟友だった秋山さんがどんな「英雄の生涯」を振るのか気になって行った。

中高年の楽団員が目立ったダスビダーニャと違って、平均年齢20代?と思うような若さ。
学生オケを卒業して数年以内の人が大半に見えた。

秋山さんもオケの公式YouTubeで言っていたが、プロと遜色ないレベルである。
特に驚いたのは「英雄の生涯」のコンミス(小野さん)のソロ。まったくプレッシャーを感じさせないのびのびした弾きぶりで、凄い心臓だなと思った😅

巨匠秋山の棒で「英雄の生涯」を弾けるなんて、プロでもなかなか経験できない。一生の宝物ですね😊

ソリストで印象に残ったのは、モーツァルトのフルートとティンパニ。R・シュトラウスはイングリッシュホルンがよかった。

秋山和慶を聴くのは2回目。前回はこちら。

結論から言うと、今回も物足りない思いがした。

私が勝手に「名匠三羽烏」と呼んでいた秋山和慶、小泉和裕、飯守泰次郎を積極的に聴いてこなかったのは、「手堅いだけで面白味がない」という先入観があったからだ。

実際に3人とも聴いてみて、小泉和裕に関してはまったくそんなことはなく、本格や王道がもつ凄みを実感させられたが、秋山和慶は2回ともその先入観を覆せなかった。

モーツァルトの39番でその傾向は顕著だった。

私は交響曲作家としてのモーツァルトの評価が低い。
ハイドンやベートーヴェンほど、交響曲の出来がよくないとすら思っている。

モーツァルトはピアノ協奏曲や声楽曲(オペラや宗教曲)が抜群にいい。
これらの音楽の羽根が生えたような融通無碍さに比べると、交響曲の生真面目さはどうだろう。
慣れないスーツを着てるヤンチャ坊主みたいだ。

その中でも39番は、36番「リンツ」に次いで後期6大シンフォニーの中では好きな曲である。
坂道を転がり落ちるようなチャーミングな第4楽章が一番の魅力だが、秋山和慶の39番は最初から最後まで生真面目だった。

ベートーヴェンの4番やブラームスの1番のような造型と言えばわかりやすいかもしれない。
手綱をしっかり握りしめて、要所要所でピシッと鞭を入れていくような棒捌きは熟練のオーケストラビルダーならではだが、私が生の音楽に期待する面白味とはかけ離れていた。
第2楽章なんて「なげー😂」と思っちゃった。

こういう音楽がなぜつまらなく感じるかと言うと、先の見通しが立つからである。次にこういう音が来るのね〜次のフレージングはこうね〜とことごとく予想通りの展開なので、はとバスツアーが好きな人には安心感があっていいのだろうが、バックパックで海外一人旅していた私には退屈の極み。

不思議なのは、小泉和裕も気を衒わない芸風なのに、そういうつまらなさを感じさせないところである。
秋山和慶は2回しか聴いてないので何とも言えないが、オケの手綱をきつく締めすぎなのではないか。
だから、予想を超える“何か”が生まれづらい。

反対に小泉和裕は、正攻法ながら音楽に伸びやかな呼吸があり、スケールも遥かに大きい。

二人とも手綱はしっかり握っているが、オケの自由度が違うように感じるのである。

今回は珍しいものが見れた。39番はオーボエがないので、チューニングがクラリネットだったのだ。
オーボエがない曲というのも、開演直前にWikipediaで「予習」して知りました😅

後半の「英雄の生涯」はメジャーな曲なのに馴染みが薄い。私はR・シュトラウスを苦手にしていて、あまり聴かないのです😂

「英雄の業績」のパートで、さまざまな過去作の引用があるようだが、どれひとつとしてわからなかった😅

この曲自体、生で聴くのは初めてか2回目(前回があったとしても覚えてない)。CDも売ってしまって手元に1枚もないかも。

そんなR・シュトラウス音痴な私だが、大編成の難曲を声部が埋もれたり濁ったりすることなく、鮮明かつダイナミックな壁画のようなスケール感で描き上げた巨匠秋山の手腕には感服した。

国内外の複数のオーケストラの名誉ポストを務めていることからも、オーケストラビルダーとしての実績は十二分に感じられるが、最初に書いた「手堅いだけで面白味がない」という印象はまだ拭えない。

最近フォロワーさんとベルリオーズの「幻想交響曲」の話になり、YouTubeでラストのコーダだけさまざまな指揮者で聴き比べをしたのだが、私の好みはマゼールやヤンソンスより圧倒的にミュンシュや小林研一郎だった。

「美は乱調にあり」ではないが、「幻想」のようなテンションの激しい曲をじっくりインテンポでやられても困る。
恰幅のいい堂々たる「幻想」なんてやだなぁ😂

まあ音楽の好みは人それぞれだから、「幻想」であろうとモーツァルトであろうと、カッチリした造型でやってほしいという人もいるのだろう。

しかし私は、先の予想がつくような音楽なら家でCD聴いてればいいよねって思う質なので、今日の演奏会には不満が残った。

オケのレベルは高かったし、指揮者が手綱をしっかり握った「手堅い音楽」を期待していた人には大喝采だっただろう。

奇しくも来月、小泉和裕/九州交響楽団の「英雄の生涯」を聴きにいくので、小泉と秋山の芸風の違いを体感できればと思う。

秋山和慶は9月に東響でブルックナーの「ロマンティック」をやるので、行きたいと思っている。
ブルックナーであれば堅実に煉瓦を積み上げるような芸風が一番活きるはず。

オケは長年の相棒である東響だから、秋山和慶の真骨頂が味わえるのではないかと思う。

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