マガジンのカバー画像

超短編集

367
自分の投稿した1~3分で読める読切超短編小説集。 黒色は暗めの、白色は明るめの話。 名前のない彼等の1頁。
運営しているクリエイター

記事一覧

嫌なことは起きた

頭痛持ちの彼女は今日もまた、右のこめかみに手を当てていた。 あー、なーんか嫌なことが起き…

sai
2年前
1

センベツ

子供たちが集められ、教壇にひとりの大人が上がる。 その大人はひらりと優雅に一礼し、子供た…

sai
2年前

365日目

彼は何もない真っ暗な空間に横たわっていた。 上も下も真っ暗、真っ黒で、何もない。 彼はそ…

sai
2年前
4

差し出す

放課後。 美術室。 私は一人で絵を描いている。 いつもの定位置で日が暮れるまでずっと描き…

sai
2年前

消えた旅人

旅人が世界から消えてしまい、季節が巡らなくなってしまった。 ある場所は春で止まっている。…

sai
2年前

はしご職人

この星に生まれた者は物心のついたころから梯子を作り始める。 どこまでも続く高い空に向かっ…

sai
2年前

ライア

私はこんなところにいるべき人間ではないはずだ。 そんな思いがここ数年、私の中にゆっくりとでも確実に蓄積されていた。 気が付いたらその思いは、もうすぐ破裂しそうな風船のようになっている。 どうしてこんなになるまで放っておいたのだろう。 まだ小さなうちなら難なく消し去ることが出来たというのに。 ここまで膨らんでしまったものは、どう手を施しても私自身も周りも無傷では済まないだろう。 八つ当たり、周りはそう思うのかもしれない。 でも私からしてみればこれは、八つ当たりなん

ヴューポイント

僕は全くうまく動いていない頭で、ウラン235の連鎖反応について考えていた。 中性子を飲み込…

sai
2年前
1

  エネルギーがない。 だから今年の電気代は高い。 彼だったか彼女だったか忘れたが、誰か…

sai
2年前

アンサー

ここはどこだろう。 見たことのない場所に、上下左右というか全体的に夜に包まれてるようなへ…

sai
2年前
1

フー ア ユー

あの日、俺は敗北感を始めて知った。 俺の想像が到底及ばない、そんな人間が存在するなんて思…

sai
2年前
1

世紀末の夕暮れ

1999年。 夏。 某所。 少年達は残り少ない夏休みを満喫していた。 その中の一人に平凡な少…

sai
2年前

巡らせるな

季節を巡らせる旅人がきて、今年も冬になってしまったのは一ヵ月ほど前のことだ。 今回街にや…

sai
2年前

半透明の自分

ぺちぺちと頬を叩かれて僕は目を覚ました。 気持ちよく眠っていたのに、誰だよ、なんだよもう。 睡眠を邪魔されたという認識だったので、僕は頭を起して周りを確認したのだが誰もいない。 確かに誰か、もしくは何かに頬を叩かれたはずだった。 しかし僕の回りには誰もいない。 その事実が寝起きの不機嫌を加速させる。 くそが…… 小さく悪態をつき、もう一度布団に潜り込む。 右に寝返りを打ち、布団を頬の上まで引き上げる。 これでもう見えない何者かに頬を叩かれることはない。 そ