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5月1日 春夏秋冬、神様の恋?【今日のものがたり】

 暖かい「春」よ。
 いや、暑い「夏」だ。
 いやいや、涼しい「秋」でしょう。
 いやいやいや、寒い「冬」で決まり。

「自己PRをしていきましょう」

 春は声を発すると辺りにサクラの花びらが舞う。しかもサクラの香りつき。それに夏・秋・冬は惚けてしまう。わかりやすい奴らよ。

 春の次は俺だと夏が言いよる。
「活動的になるんだ、身も心も! 人間はポジティブになれる!」

「でもさ、汗かいてベトつくよな」
「暑くて夜眠れないし」
「蚊に刺されまくるし」

 次々と反論意見が出されてしまうが、それもまぁ仕方あるまい。

 秋も「紅葉が素晴らしいし、何より気温がちょうど良くて過ごしやすい」と言い、冬も「コタツで食べるミカンが格別にうまい」と持ち味を提示するが、わしはもっとエッジの効いたPRが聞きたかったんじゃがなぁ。

「判定をお願いします! 神様!」

 わしは持っていたお気に入りの杖を突き出す。

「春が一番!」

「「「どうしてですか!」」」

 夏・秋・冬の声が見事にハモリよった。
 しかしじゃ。目がいくのはやはりあやつよ。うーむ。春を見つめていると、どうにも頬が緩んでならん。まいるのう。

「だって、春はとびきり可愛いじゃん? 恋したくなるかわいさじゃん?」

「ありえねぇー!」
「恋したくなるはわからないでもないけど、でも!」
「『じゃん』って! おまえそれでも神か!」

「なんじゃその言い方は! 神への冒涜じゃ! 冬は最後ね」

「おいおい、マジかよ……」

「それではわたくし、春が最初ということで」

 相好を崩した春の顔があまりにもまぶしく、舞いあがる花びらのダブルパンチで、言葉もないようじゃな。これは完敗だの。

 かくして、日本の四季は「春夏秋冬」の順に落ち着いたわけじゃ。


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