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6月26日 かみなりのなる日【今日のものがたり】

「雷が鳴っていますね」
「そうだな」 

 ドリスコルさんが近くの窓から外の様子を伺う姿を見て、わたしは少し安堵する。
 晴れている日よりも今日みたいに雨が降っていたり、曇っている日のほうが気分は悪くないそうで、ベッドから身体を起こし先ほどまで本を読んでいた。

(この雨と雷では、お店にパンを買いに来る人もいないだろうなぁ……)

 パパとママが作っている、最高においしいパン。それが売れ残る可能性のあることだけが残念だった。でも、今日だけは我慢。

「エレンは雷が怖くないのか」

 ドリスコルさんがこんなふうに何か聞いてくることは珍しかったので、わたしは驚きつつも内心嬉しくて、ドリスコルさんがいるから怖くないですって言いそうになってしまった。

「怖いです……特に、夜、一人でいるときは」

「私も幼いころはそうだった」

 言われて初めて、ドリスコルさんにも子供の頃があったんだと気づいた。それはそうだよね、吸血鬼だって生まれてすぐ大人な人はいないものね。でも、ドリスコルさんはなんだか、もうずっと長いこと大人の人みたいで、わたしの知らないこともたくさん知っている大魔導士に近い存在に思える。

「ドリスコルさん、わたし、雷をずっと見て、感じていて、思ったことがあるんです」

 まばゆい刹那の光とおなかに響く轟音。

「神様の音なのかなって。神様がわたしたちに何かを伝えようと鳴らしている音」

 なんて、わたし自身は神様が本当にいるのかを証明することはできないし、でも、きっとこの世界のどこかにはいるのだと思う。わたしがこうしてドリスコルさんに出会ったのも、あの日アーリンさんに助けてもらえたのも、わたしの力だけではない。何かほかの力があったからだと思っているから。

「神の鳴らす音。神鳴り、か。かみなりには意味があるというし、今宵の音も私たちに何かを伝えようとしているのかもしれないな」

 わたしたちに何かを……。
 それをわたしは、正しく受け取ることができるだろうか。
 ぎゅっと、そばにあったクッションを抱きしめる。

 きっと、大丈夫。

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