「これはシーザーサラダドレッシング……」
「この日は和風ドレッシング……」
「こっちはクリーミーサウザンアイランドドレッシング……」

　す、すごいな……。

「ちーちゃん、どうしたの？　ドレッシングが何かあった？」
「あ、みーちゃん、ごめん。声に出てた？」
「うん。見てるのは……それ、なに？」
　
　隣の席のみーちゃんが困惑するのも無理はない。
　私の携帯電話には画面いっぱいにあるものが写っている。これが何であるか、ぱっと見ではわかりづらい。私も慣れるまでは戸惑ったけど、今ではもう笑顔になっちゃう。

「これはねぇ、とある方のサラダ写真なんだ」

　とある方、というのは俳優さんのことなんだけど、まだ好きになって日が浅いので、名前を出すのがなんだか恥ずかしい。それに、名前を出したらそっちのほうをつっこまれそうだから、ここはなんとか名前を伏せてサラダの話を続けようと思う。

「え、サラダなの？　うーん、言われてみればそう見えなくもない、かな……」
「正直、サラダに寄りすぎてるよね。もうちょっと引きで撮ったらぱっと見でもサラダだってわかると思うんだけど」

　たぶん、俳優さんはこれまでそんなに携帯電話で写真を撮ってこなかったのかなーと思う。このサラダの写真も今月に入ってからスタートしたものなので、まだベストアングルを計りかねている感じだ。
　……というのは一ファンの勝手な想像なので、こちらとしては写真がアップされるたび、元気なんだなーと思えて嬉しいので、ずっと続けてほしいと思っています。

「それでドレッシングって……」
「ああ、サラダにかけてあるドレッシングは何でしょう？　という問いかけをいつもコメントにしてくれるんだよね」
「ちーちゃん、わかるの？」
「うん、わかる」
「え……それってすごくない？」
「そうかなぁ。それより、こんないろんな種類のドレッシングが家にあることのほうがすごいなって。私の家はポン酢とゴマだれぐらいだし」
「……な、なるほど……？」

　そうだ。今日の帰りに俳優さんがかけていたドレッシングのどれかを買って帰ろうかな。冷蔵庫は……朝の時点では余裕あったな……うん、そうしよう。いきなり買って帰ってもお母さん、びっくりはするだろうけど、話したらわかってくれるはず。

「ちーちゃん、なんだか楽しそうだね」