私はドキドキしている。
　クラスメイトの千葉ちば 雛ひなちゃんに「ヘアメイク研究部を作ろうと思っているのだけど相川あいかわさん、ヘアメイクに興味ないかな？」と誘われたのだ。

　驚いた。雛ちゃんってクラスのなかではそんなに口数は多くないし、私も雛ちゃんなんて前からずっと親しかったみたいな呼び方しているけど、雛ちゃんって響きが良いから勝手にそう呼ばせてもらっているだけで、毎日のように話す仲、というわけではなかった。

　でも、雛ちゃんはノーメイクでもかわいいし、髪型もポニーテールにしたり、編み込みにしたり、丸めてお団子にしたり、よく工夫している。
　そういうことを誘われたあとに思い出して、もしかしたら私は雛ちゃんのことをなんだかんだで見ていたのかもって気づいて、ヘアメイクのレパートリーが乏しい私は、この誘いに乗ったのだった。

「鮫島さめじま先生ってどこのマスカラ使ってると思う？」
「ドラッグストアに売ってて、私たちのお小遣いでも買えるものだといいんだけどなぁ」

　そうして放課後の教室で“ヘアメイク研究部”は静かに始動した。いや、厳密には同好会として認められる人数になっていないし、先生にも掛け合っていないし、カッコ仮の状態ではあるのだけど。
　それでも私はワクワクしている。クラスメイトとこういう話ができるなんて……雛ちゃんの行動力に感謝だ。