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2月22日 忍者と私と将来の夢【今日のものがたり】

 あの日、私の夢は「忍者になる」ことに決まった。

 小さな頃から、忍者にあこがれてはいた。父も母も忍者ではなかったけど、忍者が好きだという私を温かく見守っていてくれていた。
 忍者が出てくるドラマとか映画とか、小説とか漫画とか、たくさん読んできたのだけど、私の中の一番はあの日に出会った忍者さんで、それはずっと変わっていない。

 猫ちゃんを助けてくれた忍者さん。
 あこがれを夢に変えてくれた人。

 ものすごいスピードで木に登って猫ちゃんを救ってくれた、恩人さん。その身のこなしは、私がそれまで見てきた中で一番素早くてお話の中から本物の忍者が出てきたんだ! と思うくらいの衝撃だった。だから、そのときからその人のことを「忍者さん」と呼ぶようになった。
 何度もその忍者さんにお礼を言って私は家に帰ろうとした。でも、忍者さんがどこに住んでいる人なのか気になって、私は見つからないよう後をつけることにした。

 忍者さんはなんとそのあと、屋台でおでんを食べていた。いつもいい匂いがしている屋台。私も一緒に食べたかったけど、お金も持っていなかったし、子どもが一人で屋台に行ったら、怪しまれるよねって、忍者さんが出てくるまで待っていた。

 忍者さんは屋台をあとにして、突然走り出した。そんなの聞いていない! そりゃそうだよ、だって、忍者さんは一人なんだから、歩いてもいいし、走ってもいいし、スキップしたっていいんだよ。
 私はなんだか楽しくなって追いかけた。忍者さんが私に気づいていると気づかないくらい、私は夢中になって追いかけた。

 忍者さんはある建物の前で立ち止まった。そして、後ろを振り返った。そのときの私は、そこで初めて、忍者さんにバレたと思った。

「僕について来れたということは、君は忍者になれる素質があるよ」

 びっくりした。忍者さんは確かにそう言ったのだ。私は怒られるんじゃないかと、身構えていたのに。

「もう少し大きくなったら、この学校においでよ。ここに来たら、君は忍者になれる」

 夢のような、でも、本当の話。
 私は今、忍者さんが通っていた学校で忍者になるための勉強をしている。あの日の忍者さんは私の先生。とってもカッコいい私の師匠だ。

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