私の町には王子さんがいる。

「またぁ……王子って、なんでも王子ってつければいいってもんじゃないでしょう」
「いや、その人、苗字が王子らしくて」
「え、なにそのオチ」
「オチじゃないよ、本当の話。王子 大地（おうじ だいち）さんっていう方なの」

　王子さんの説明をするとき、こういう流れになることがままある。

「やっぱりカッコいいの？」

　この質問もよくされる。そう、なぜか“やっぱり”がつくのだ。

「私はカッコいいと思うよ」

　そう答えることにしている。どんな人をカッコいいと思うかはそれこそ人それぞれだから、“私は”を必ず入れるようにしている。うん、王子さんを思い浮かべるとすぐ笑顔になれるくらい、私には格好良く見える。

「紅茶屋さんで働いているんだけど、そこは星とか惑星とかをモチーフにした雑貨も併売しているから、『星の王子さま』なんて言われたりもしてて」
「なかなかなこじつけだね。でも、気になってきた。その星の王子さま」

　ふふふ。その言葉を待っておりました。

「今度の休みに行ってみる？」
「でも私普段、あんまり紅茶を飲まないんだよね……敷居が高そう」
「大丈夫、大丈夫。私がひとりでも行けるくらい優しい雰囲気の紅茶屋さんだから」