かたる


例えば思いのひとつまみ
口に出してみる
あるいはこうして
紙の上に書き留めてみる
(紙の上に書くという行為自体、もはや比喩表現になってしまった)

どこからか放たれて
落下しながら消えゆく光
さながら夏の夜の花火
ほんの一瞬を輝かせるため
たったそれほどしかないことなのです

それでもこの魂を削り削って
現実世界のものであるため
今日も言葉を紡ぎます
どうにも上手い人たちは
削り終わった塊も
元の形のままなのだけれど

僕らのようなものたちは
もうそれが魂と呼べる代物ではなく
虫に食われたりんごのような
あるいはたまたま山道の端の溝で見つけた
もうだいぶ時間の経った猫の死骸のような
ただ土にかえるのを待つだけの
抜け殻のようになるまでも
削りに削ってまたふぅと息を吐いては
満足げに眠りにつくのです

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