かたる 4


本当にいつも考えすぎなんじゃないかな?
間違ったことは言ってないけど

考えすぎるということは決してないんだよな
答えがない問題ばかりなんだから

はっきり言ってあなたが考えないといけないのは、
来月の生活費のことなんじゃないの

なに、偉大な芸術家はえてして金に困っていたものさ
時給1000円やそこらの仕事より価値あることをしないとね
僕の人生が終わる時に、誇って口にするのが、
安い賃金で必死に働いてましたじゃつまらないだろ?


見えない檻の中にいた気はしていたが
細々生きてきたことで
その檻が可視化されるようになってきた
この三すくみをいったいいつ仕組まれてしまったのだ

僕たちが戦うべき相手は
考えることをやめた有象無象の馬鹿どもではないはずなのに、
いつのまにか肉の壁のように僕たちにぶつけられ
剣は届くどころか振り上げるや否やはたき落とされる

その壁となる人たちはまだ赤ん坊で
与えられたものしか口にできないし
それ以外のものを得ることも出来ない
例えそれが毒だとしても
気づきもしないし慣れていく

分かりやすい色、分かりやすい香り
なんの知恵もいらない
ただ感じたままに
与えられたものだけで生きていく




 ロシアに住む友人から連絡が届いた。
週に何度か日本語を教えているのだ。
この日の夜、(向こうの時間では昼ごろになるが)またZoomで会う予定をしていた。
届いた時から嫌な予感はしていたが、内容はこうだ。

「今朝警察から戻ってきた。昨晩からそこにいて、
いくらか怪我を負っている。
とりあえずそんなに心配はしなくていい。
ただひどく疲れている。
私たちは自分たちの政府を恥じている。
「No War Meeting」に行き、記事や嘆願書を書いたが、残念なことに政府が怒り始めた。
すっかりエネルギーがなくなってしまったので、
今日は会えないのだが、私は私自身と、私たちと、私たちの政府のことについて、本当に申し訳ないと思っている。でも私は平和が近い将来訪れる事を切に願っている。」

僕は僕の無力さを思い知り、
僕の芸術の無力さを思い知り、
今の自分の現実をつきつけられ、
世界を変える力もなければ、
世界を変えるために戦った友人にかけることばも持ち合わせていないと思い知らされた。

だが、少なからず「知った」からには発信せずにはいられない。
それだけが僕にできる事だとも思うし、
僕も腹を括ろうと思う。

資金や軍事的な支援がウクライナに向いていることを、
単純にことの終わりに近づいていると捉えている人間は流石にいないと思うが、元々ウクライナはNATO加入を目指していたし、
核は放棄したものの、ロシアに対し核武装も示唆していた。
ということは構想の中に少なくとも武力での威嚇はウクライナ側にもあったのである。そしてその後ろにはNATO、つまりEUやアメリカがいる。

細かい事情や歴史についてここで話すつもりもないのだが(そもそも専門家でもないし)、
僕が憂いているのは相変わらずの人々の想像力の欠如と思考の放棄。
食べやすく調理され、もう素材の形などわからなくなった料理のようなものを食べるだけの人々。

近年の世界的なパンデミックにおけるメディアや政府対応、態度の違和感は、
僕にそれまでのさまざまな推測を確信するに十分だったわけだが、今回の件で表面的な情報だけ受け取り、
レースでも始まったのかと思うほど我先に、
軽々しくSNSでそれらしいことをいうミュージシャン(同業者)も数えきれないほどいた。
馬鹿なまま、誰かの真似事の音楽とか芸術らしきものを満足げにやり続けていけば良い。そして馬鹿が馬鹿を騙して成功していけばいいのではないか。
愉快な世の中じゃないか。
ただそういう類の人間が作った作品を僕は芸術とは思わない。

例えはロシアが今回の件で制裁を受け、
(今回の目的はウクライナの武力放棄と言っているが)
想像したくはないがさらに大きな戦争に発展してロシアが負けた時、
きっとさらに石を投げつけるような人が多いはずだが、そこに住む人たちはどうなるのか。
政権をすげ替えれば一旦の平穏は迎えるかもしれないが、ロシアがそもそも抱えていた問題は何も解決しない。
それにウクライナの住民の半分はロシア人で、殆どがロシアにルーツを辿る人々である以上は、
単純にロシアに制裁を加えて済むほどシンプルな問題でもない。

アメリカに住むウクライナ人の友人は、家族が心配で毎晩眠れないと言っていた。
ウクライナもロシアもルーツに持つ彼女に、
僕は何と声をかけていいのかわからない。

世界は雑に敷かれた絨毯のように思える。
スペースが足りないのに、なんとか見えるところだけ綺麗にしようとし、
所々見えない部分でしわ寄せがいっている部分に時につまづく。

数限りなくしわ寄せが来ている世界で、全てを解決する答えなど存在しないはずだ。これだけは真理であるはずで、
どんな決定にもネガティブな面はついてまわり、常にメリットとデメリットを精査し続ける事を要される。

その世界において、もっともらしく「答え」のように置かれたものに何も考えずにすがりつづけることがいかに馬鹿げているのか。

もしここまで読んでくれた稀有な人がいるのであれば、
僕はあなたたちと、人々の意識を変えていく術を、
そして世界について大真面目に話をしたいと切に願う。

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