行き止まり


追い詰められて、逃げ場がなくなったその刹那
隅に見つかる小さな穴から形を変えて抜け出す
ダクトに吸い込まれる紫炎
あるいは渦になって流れ出る無形の川の水のように
自身の形を崩し、全てを放棄して
ようやく逃げ出すことの出来た
その先に歩むべき新たな路地がある

その路地はまた異国の物品や
その人生を想像できない人々で埋め尽くされ
一角を抜ける頃には価値観が揺り動かされ
一寸世界を知った気になっている
ぶつかる肩に負けぬように
横切る人に見下されぬように
身を固く強張らせ
なるべく背筋を伸ばして闊歩する

そうしてその先にぶつかる行き止まり
背後に亡霊が迫ってくる
目に見えない、実在するのかもわからない亡霊から
すんでのところで逃げ出すために
自らを思い出したかのように
また形を失い、小さな穴から流れ出るのだ

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