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カエルとの出会い

今回は気持ち悪い表現がありますので、気になる方は・・・。



「やっと消えたかな・・・」

私の家の前の歩道を歩いていくと、途中で車道になる。そこに切ない思い出がある。

カエルだ。

平成30年、夏の暑い日の夕方、家路につく歩道を歩き、ふと足元を見ると

「わっ!」

驚いて声をあげてしまったのだが、周りには誰もいなかった。20㎝位のヒキガエルがのっそのっそと私に背中を向けながら歩いていた。顔を見たくて前に回り込んでのぞくとヒキガエル(以下ヒキさん)が足を止めた。

こちらを見たような感じがしたのか?ヒキさん。

「う?敵か?」

というような顔をしていた。が、すぐにヒキさんは顔を前に向けて歩き始めた。よく見ると片足が無く引きずって歩いていた。そして身体じゅうがカラカラになっていた。

「きっとこの暑さだから・・・」

私の家の近くには水辺が無いのでよくここまで歩いてきたなと思いつつ、まあ、ヒキさんは水が無くてもある程度大丈夫なことは分かっていたので、暑さに負けないようにそっと、持っていた水をかけてあげた。そしたら目を閉じて気持ちよさそうにしていたが、すぐにまた歩き始めた。

私はそこでヒキさんとお別れして家路についた。

次の日の朝、ヒキさんは歩道にいたが車道に近い場所でうずくまっていた。

「大丈夫かな?」

と思いつつ、出かけた。

そして夜、帰路につくとき「ヒキさんいるかな?」と思いながら歩いていると、とんでもないところで見つかった。それは歩道から出た車道のすぐのところにぺったんこになっていた。

おそらく車に轢かれたのだろう。

夜なのにせっせとアリがヒキさんに向かって行列を作っていた。私は何もできなくてそのままやるせない気持ちで帰路についた。

次の日

アスファルトにくっきりと印みたいにヒキさんの轢かれた跡が残っていた。死がいはすでになかった。誰かが片付けてくれたのか、それともカラスなどが食べたのだろう。

ヒキさんの轢かれた跡は夏を越して秋がやってきて、寒い冬を迎えても残っていた。最初はそこを通るたびに

「ヒキさん・・・」

と思っていたのだが、冬が本格化し春がもう目の前に来るだろうという頃には忘れかけていた。

そして、春。

年度当初の忙しさでそんなことを忘れていたのですが、連休前にふと思い出して、轢かれた跡はまだあるのかと見ると。

もうなかった。

「やっと消えたのかな・・・」