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メンソールとくちづけ

煙草をやめてから数十年経つ。

あのときは、イライラをおさえるため、リラックスるするため、いや、私自身の自信のために吸っていたような、気がする。それは、叶わぬ恋へに対しての私の答えだったのかもしれない。

最近ではお酒や煙草を売っているコンビニは当たり前のようにあるが、あのときは、いくつか回ってやっと扱っているという感じだった。あなたと待ち合わせをするセブンイレブンはその1つ。

自販機でまとめて購入していたが、いつのまにか、コンビニやたばこ店などの人とやり取りをするお店で買うことにステイタスを感じていた。それは、あなたのせいでもあった。

低い煙草から初めていつの間にか3つの銘柄を渡り歩き、ニコチンとタールが一番高いメンソールになった。車内は煙草独特の匂いとスーッとした匂いがドアを開ける度に充満した空気から漂い始める。

あなたに会うまでに、必ずboxの残りを1・2本にしてから車に乗る。そして、車の灰皿をいっぱいにする。匂いもさらに車内にこびりつくように、あなたの心にこびりつくように、吸っては灰皿に。

待ち合わせのセブンイレブンに着く。家から近いあなたはほとんどといっていいほど先に待っていてくれた。そして手には何時も煙草2箱を入れた袋をもって入口の近くにいた。

そばに近づくといつもの笑顔。手渡された煙草2箱を私は鞄に入れ、そして、煙草に火を付けてあなたの言葉を待つ。
「深夜に、ごめんね」

そんなことよりも、どうして会いたくなったの?パートナーは大丈夫なの?私と会っていていいの?いつ私のものになるの?聞きたいことばかり。それでも、その言葉は出せない私。暗闇の中の笑顔で心は誤魔化されてしまう。

今日はあなたが運転なのね。手に持った鍵を私から奪い取る。私は助手席に座り、袋に吸殻を入れた後、しっかり口を結んでサイドボードに置いたあと、残り香がまだ漂う車内で私からあなたへ