人として向き合う…「なかま」と呼ぶ意志

「あなたに向き合うわたし」
に向き合うこと


第一線現場の社会福祉援助は、利用者(当事者)の方と支援者が「生身の人間関係」を結ぶことで、実際の支援をすすめていきます。(社会参加・就労支援、生活支援、外出・通院支援、家事援助、相談支援等)

「援助関係づくり」と「援助実践づくり」を相互に深めていくことが、社会福祉援助(支援)の実践過程です。

そして、すべての支援は「支援者である“わたし”」を媒介にして、利用者の方に届けます。

ですから社会福祉援助実践とは、「『あなたに向き合うわたし』に向き合うこと」に他ならないと思います。

また「利用者」という名前の人はいませんし、「支援者」という名前の人もいません。

福祉サービスの「利用者」と、福祉サービスの「提供者」として関係性を出発させつつ、利用者である「〇〇さん」と、支援者である「わたし」が出会い、向き合い、個別具体的な関係性をつくり、その関係性に人間的な共感と信頼感を育むことが、第一線現場の支援の日常の姿です。

「なかま」とは
「わたしはあなたとともにある」
ことへのおもい 


アルプス福祉会では、開設以来、利用者の方を「なかま」とお呼びしています。

かつてコムハウスで、地元の中学校の職場体験学習の生徒さんを受け入れたときでした。
生徒さんから、「なぜ、利用者の方を“なかま”と呼ぶのですか?」と質問をうけました。

当時、職員間であたりまえに使っていた言葉だったので、その質問をうけて、わたしたちはあらためて「なかま」という言葉にこめた思いを確認し合いました。

それは、利用者の方に次の2つの「立場」で向き合う意志を持っているからです。

同じ「人」として向き合う

同じ時代を「ともに生きる者」として向き合う  


一方で、わたし自身、「なかま」という言葉に違和感を覚え、使わないようにしていたことがありました。

それは利用契約制度がはじまって、「サービス」「利用者」という言葉が使われ始めた時期でした。
当時、「なかま」という言葉がどこか格好良すぎると感じたり、違和感を覚えたからでした。

「なかま」とは、「わたしは、あなたとともにある」ことへのおもいをこめた言葉です。
言葉は人の意識を決めるちからを持っているので、その言葉を使えば使うほど、自分の意識が強まります。

こう気づかされてから、わたしは「なかま」という言葉をふたたび使うようにしました。

利用者の方々は、「障がいのある人」である前に、自分らしく生きたいとねがい、地域に生きる「ひとりの人」です。

また、「ひとりの人」の生きづらさの改善をはかるとともに、生きづらさを「生み出しにくい地域・社会」を、ご本人とともにつくっていくことが「社会福祉」という営みです。

障がい福祉は「サービス」という言葉が一般的になっていますが、わたしたちは、社会福祉の本来のあり方を確かめ、見失うことなく、一人ひとりの「なかま」に向き合っていきたいと思っています。

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