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ERC-6551って有用なの?

こんにちは。
Web3はしばらくの間「冬の時代」と言われておりましたが、ようやく明けつつある状況になってきたと思います。そんな中、注目を浴びそうでいまいち浴びないNFTの規格「ERC-6551」の有用性について考えています。

ぼくはエンジニアではなくビジネスサイドの人間なので、細かな仕様までは言及しませんが、この規格を使って事業を作ろうと思うといろんな良いことと良くないことが起きそうだ、ということは分かってきました。

そもそもERCって何?

ERC=Ethereum Request for Commentの略です。この上位概念としてEIP(Ethereum Improvement Proposals)というイーサリアムの改善提案があって、、、みたいな括りの話がたびたび出てきますが、ビジネスサイドとして覚えておけばいいことは、

【ERCは、進化すると EIP になる】

ということだけです。

敢えてもう少し細かく言ってみると、Ethereumは日々「改善提案」が為されていて、まだ正式な規格としての採択が確定せずに運用されているときは「ERC」であり、正式な規格として採択されると、「EIP」となります。

更に言ってみると、「ERC」の間は、順調にいくと5段階のフェーズがあります。

①Idea :アイデア提出
②Draft :検討準備
③Review :レビュー段階
④Last Call :最終レビュー
⑤Final :実装が決まったもの

それぞれ動いている規格が今どんな状況にあるかは、こちらにて確認することができます。ぜひ見てみてください。
ちなみに「ERC-6551」は、2024年1月9日現在【③Review】のフェーズにあります。できることが固まるにはまだ時間がかかりそうです。

・・・
【引用】https://eips.ethereum.org/all


ERCの後についてる数字は?

ERC-6551でいう「6551」の部分は、何番目の提案か、を表しています。
故に、ERC-6551は、6551番目の改善提案であることを表しています。採択されるものは少ないですが、提案自体はかなり為されているということですね。

ERC-6551ってどういう規格提案なの?

簡単に言うとカンガルーです。
カンガルーは、親カンガルーのポケットに子供とかおもちゃとか入っていますよね。そして、親カンガルーが移動するときはまるっとポケットにいろんなものが入った状態で移動するし、子供はポケットから出て移動することもできる。そんなイメージです。

ERC-721規格のNFTを親として、そのポケット(これを「TBA」=Token Bound Account と言います。)に別のNFTを入れることができます。また、入れるNFTは複数でも大丈夫ですし、更にいうとFT(Fangible Token:ここでは暗号資産のこと)でも大丈夫です。親NFTの所有者が移転すると、そのTBAに入っているものも全部同時に所有者移転しますし、ポケットのNFTだけを所有者移転することも可能です。

じゃあそのカンガルーを使うと、何が良いのでしょうか。

ERC-6551を使うと何が良いの?

3つ例を挙げてみます。
どんな事業・サービスに使えるのか、という点にも言及しますが、その前段階でのメリットとして、まずは【① 移動の効率化】は言えると思います。
複数のNFTの所有者移転をさせたい場合、これまでは1個ずつ移転させることが必要でしたが、TBAの中に入っていれば親NFTを移転させるだけで移転が完了するので手間が減ります。また、その際にかかるガス代も1回で済むので、経済的な節約にもなります。

また、ゲームに使えば【② ゲームキャラクターの装備とビジュアルの反映】ができるようになります。ドラクエ4でいうと、ソロの親NFTにTBAを作り、その中に天空の兜などの天空シリーズを入れると、真の勇者になるみたいな話です。
ただ、これの盲点として、TBAに入れてから親NFTの見た目に反映されるまでの即時性にまだ技術的な課題があったりしますので、事業に使う際には要注意です。

何よりぼくが最も可能性を感じるのが、様々な業種で汎用性の高い会員証の仕組みでの活用で、【③ 会員証としてのNFTに対する、特典やポイントの直接的な付与】ができるようになります。
会員証をNFTにする必然性については未だ確立されていませんが、会員証をNFTにする事例は複数の業界でいくつか出てきており、現在も積極的に模索されている領域です。ERC-6551は、この領域にも大きく寄与する可能性を秘めていると感じました。

一方で、良いことばかりでもありません。

デメリットとして、【❶ 資産の不透明性】はありそうだと感じています。
サービスの仕様でTBAの中身を明確にできればいいものの、必ずしもそうとは限らないので、いざNFTを譲渡してみたらTBAの中に入っていた貴重なNFTやFTまで意図せず譲渡してしまうケースも起き得るので、注意が必要です。

また、ビジネスを作る立場として、大きな障害だと感じたことがありまして、それは【❷ MarketやWalletがERC-6551に対応する必要がある点】と、【❸ 監査費用が上乗せでかかる点】です。

ERC-6551規格のNFTを作ったとしても、それを販売しようとするMarketが対応していないと、意図した販売はできません。また、NFTを保管するWalletも同様で、Wallet側でERC-6551対応が為されていないと、TBAの中身として確認することができませんので、自前のプロダクトがない場合に他社依存になってしまう点は、リスクとしてよく考えておく必要があると思います。

また、❸もあまり言及されることはないですが意外と厄介で、費用が数百万単位で上昇する要因となりますので、こちらも留意する必要があります。


まとめ

ERC-6551は、事業において大きな有用性を十分発揮し得る規格だと言える一方で、用途が確立しておらず市場が慎重姿勢です。いま事業への活用に踏み切るには、高い必然性ありきで判断するのが賢明だと感じました。

以上、ご参照くださいませ!

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