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尖った若手人材育成のエッセンスが詰まった一冊 『エッジソン・マネジメント』(樫原洋平さん)

新卒の内定者時代からとてもとてもお世話になり、現在でもご飯やお仕事でご一緒させていただいている樫原さんのご著書『エッジソン・マネジメント』が刊行されました。樫原さんは大学時代の学生団体の(実績的にも年齢的にも)大先輩でもあるのですが、いまでは私のロールモデル的存在です。

『エッジソン・マネジメント』では、若い人の成長の障害になっている4つの分断(①高校と大学の分断②大学と企業の分断③採用と育成の分断④人事と職場の分断)を紹介した上で、この分断をつなぐためのコンセプトとして大学の4年間と社会人3年間を合わせた7年間の期間を指す「ゴールデンセブン」と"専門性にとがる"だけでなく"目的に対してとがる"ような「エッジソン」人財が提唱されています。尖った若手人材育成のエッセンスが詰まった一冊でした。

『エッジソン・マネジメント』を読んでとても印象的だったポイントが大きく3点ありました。

①HR領域でビジネスする以上は人財を刈り取るのではなく育てる覚悟を!
②1学生と1企業の関係性ではなく、国家規模で捉えた産学連携を実現!
③自分自身が志高く社会を変革するエッジソンになれ!

①HR領域でビジネスする以上は人財を刈り取るのではなく育てる覚悟を!

■大学と採用の分断

先述の4種類の分断が論じられていますが、その中で大学と採用の分断について紹介します。大学側が学生に身に着けさせていることと企業側が大学時代に学生に身に着けておいてほしいこと に分断が生じていることへの危惧を記載していました。

大学と採用の分断
①教養教育の重要性のギャップ
②論文執筆能力の重要性のギャップ
③就活のための資格のギャップ
④「専門性」の解釈のギャップ

この中でも①教養教育の重要性のギャップと④「専門性」の認識のギャップは特に大きいなと私が理系採用プラットフォームLabBaseを運営する中でも実感します。理系学生には研究職に就くことを考えている人が多いのですが、研究の専門性だけ極めていれば就職後に活躍できるとは限らないのが実情であり、本来は専門性を磨くことに加えて、専門性をアップデートし続ける事ができる能力が大切です。

一方で、企業の方が学生に求める「ビジネス素養が強くかつしっかりと研究している学生」はごく一握りです。そこで、企業と大学が一緒になって人材育成をする"青田づくり"が大切なのだと思います。

■青田狩りから青田づくりへ!

人材を探す発想が限界を迎えているとのことです。
従来、ほとんどの企業の採用活動はいわゆるフロー型狩猟による刈り取りの採用活動が主でした。しかし、いまや毎年同じ大学・研究室に赴いても良い学生がかならずいるとは限りません。
そこで、企業は積極的に"青田づくり"をしていかないといけないと説かれています。人材を育てて採用するというストック型農耕による手法へ転換の必要性を説いています。企業と大学が連携して、「エッジソンファーム」をいくつもつくることが大切という考えに、とても同意しました。

採用主体である企業だけでなく、HRのエコシステムを形成する支援会社や私達のようなプラットフォーム運営会社も意識を変えないといけません。
人を流す活動ではなく、エッジソンを生み出すエッジソンファームを産学連携などを通して作り出すことが大切であると考えを改めさせられました。

②1学生と1企業の関係性ではなく、国家規模で捉えた産学連携を実現する!

■樫原さんのこれまでの取り組み
本書では樫原さんのこれまでの取り組みのいくつかがご紹介されています。

紹介されている取り組み
・早稲田大学国際学生寮WISH
・大阪大学市民社会におけるリーダーシップ育成支援
・同志社大学 ALL DOSISHA教育推進プログラム
・サービス業の未来を担う次世代リーダーの輩出をめざす「SESSHA」
・企業3社の合同インターンシップ「サンシャイン」
・企業6社が京都で開催する「engawa young academy」

樫原さんは本に記載できない数の取り組みをされています。この全てに共通している点が、1学生と1企業の関係性ではなく、産業規模/国家規模での変革をしているという点です。この視座でプロジェクトをすすめないといけないなと刺激を受けました。

③自分自身が志高く社会を変革するエッジソンになれ!

日本企業に採用され、本社に配属された中国のトップ大学の優秀学生さんの事例として、以下のような発言が記載されていました。

「自分の経験や能力を評価されて入社した。でも、"日本人と同じように扱われるなら、なぜ私を採用したのか。この会社にいると私が私でなくなる感覚がある」

とても生々しく感じられてこの発言はぶっ刺さりました。このような事例はそこらじゅうで発生していることは想像できますし、私自身もちろんこの事例の学生さんほど優秀ではありませんがある種近い感覚を持っていたのかなと思います。

エッジソンを輩出していくために、このような負を解消していきたいなと改めて思い直しました。

巻末には樫原さんからのあとがきに加えて、パナソニック社 採用部長の萬田氏ご寄稿「日本を強くするための採用と育成をめざして」が掲載されていました。
このご寄稿を読んだ後、私の脳裏にはたくさんの技術人材・革新人材を採用しようとしている理系採用ご担当者様の顔が浮かびました。

「まずはお前自分自身がこの負を解決するエッジソンになれよ!そんな仕事をしろよ!」と樫原さんから叱咤される気持ちになりました。

これから何度も読み返す一冊になりそうです!



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