第20椀 根深汁(ねぶかじる)
初出:2015年12月12日
<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから
テーマ:年末にむけて何かと気忙しくなるときにホッとするひと椀
「根深汁(ねぶかじる)」
実はワタクシ、池波正太郎先生の小説が大好きでして、ストーリーはもちろん、登場する料理の描写がたまらなくいいんですねぇ。それだけの本もあるくらいです。鬼平犯科帳、藤枝梅安、剣客商売と、テレビドラマや映画にもなった代表作のどれにも登場するのが根深汁という料理です。
根深汁とはネギだけの味噌汁のことです。剣客商売では大治郎が毎日食べているという設定になっていますね。他の小説ではよく冬に出てきて、舌が焼けるようなやつをふぅふぅ言いながら食べるという描写がされています。ネギは寒くなると甘みも増してきておいしいんです。
関東で好まれるネギは土を盛って根の白い部分を多くした根深ネギが好まれています。一方関西では青い葉の部分が多い葉ネギが好まれています。面白いことに中部地方では白いところと青いところが半々くらいのネギです。根深汁なので白い根だけで作りたいところなんでしょうが、もったいないので青いところも入れています。
作り方は、お好みの出汁(江戸料理ということでオススメは鰹だし)に、筒切りしたネギを入れて火にかけ、クタっとするまで煮たら味噌を加えて出来上がりです。お椀によそったらゴマ油をちょろっと落としますとまた美味。これは藤枝梅安が作った根深汁で、ご飯が五杯もおかわりできるという話も出てくるほど、食欲をそそる香りが立ちます。
何かと気忙しくなるこの時期、簡単にできるのも嬉しいひと碗。質素なようでいて奥深い味わいのお味噌汁です。しかし「え~!今日はネギだけなの?手抜き?」などと言われないよう、この池波小説のエピソードとともに、「ネギが主役の味噌汁だから」と出してみてくださいね。
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「根深汁(ねぶかじる)」
出汁:鰹節
具材:ネギ
吸口:ゴマ油
味噌:手前味噌(米麦混合麹)
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